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通年採用は「難しい」と言われがちです。
採用担当者の工数が増える、母集団が集まらない、結局は大手企業向けの手法ではないか─そんなイメージから、検討段階で止まってしまう企業も少なくありません。
ただし、その多くは「通年採用そのものが難しい」のではなく、一括採用と同じ設計のまま通年化しようとしていることが原因です。採用時期や対象、選考の考え方を整理せずに進めると、確かに負担は増えます。
この記事では、新卒の通年採用の基本から、一括採用との違い、メリット・デメリット、導入前に知っておきたい5つのポイントを解説します。通年採用が本当に自社に必要なのか、導入するならどのように設計すべきかを、具体的に考えるヒントをお伝えします。


通年採用とは、特定の時期に一斉に募集・選考を行うのではなく、年間を通して新卒採用を行う考え方です。一括採用と混同されがちですが、単に採用期間を延ばすことを意味するわけではありません。
ここでは、新卒の通年採用の基本を整理したうえで、新卒一括採用との違いを解説します。
新卒通年採用の特徴は、明確な開始・終了時期を設けず、学生の動きや採用状況に応じて柔軟に選考を進められる点が特徴です。
近年は、早期に就活を終える学生がいる一方、留学や進学、海外大学在籍などを理由に動きが遅い学生も増えています。
通年採用では、こうした多様な動きに対応しやすく、結果として出会える人材の幅が広がります。また、選考を急ぐ必要がないため、学生とじっくり向き合いながら進められる点も特徴のひとつです。
一括採用と通年採用の違いは、採用スケジュールの考え方にあります。
一括採用では、限られた期間に母集団形成から選考までを集中させる必要があります。一方、通年採用では選考時期を分散できるため、欠員や内定辞退への対応もしやすくなります。
ただし、通年採用は自由度が高い分、設計が曖昧だと場当たり的な採用になりがちです。一括採用との違いを理解したうえで、自社に合った使い分けが求められます。
比較項目 | 新卒一括採用 | 通年採用 |
主な対象 | 翌年3月卒業予定の学生 | 現役学生+留学生・海外大生・秋卒業生・既卒者・第二新卒寄りなど |
選考時期 | 特定の期間に集中(3月〜6月など) | 年間を通じて随時実施 |
入社時期 | 原則として4月1日 | 4月、10月、または個別の随時入社 |
評価基準 | ポテンシャル、同期との一括比較 | スキル、適性、個別のマッチング重視 |

従来の新卒一括採用がうまく機能しづらくなっていると感じる企業が増えています。背景には、採用市場の変化だけでなく、学生側の動き方の変化もあります。
ここでは、新卒通年採用が注目されるようになった理由を、市場と学生の変化の両面から見ていきます。
少子化の影響や売り手市場の継続により、新卒採用は年々競争が激しくなっています。
特に中小〜中堅企業では、知名度や採用予算の面で大手企業と同じ土俵で戦うことが難しく、説明会や選考に学生が集まらないケースも増えています。
一括採用では、限られた期間に母集団形成から内定出しまでを行う必要があり、その時期を逃すと挽回が難しいのが実情です。その結果、「採りたいが採れない」「内定辞退が出ても補充できない」といった課題が顕在化しています。
近年、学生の就職活動の進め方は大きく変わっています。早期に内定を獲得して就職活動を終える学生がいる一方で、大学院進学や留学、研究活動を優先し、動き出しが遅くなる学生も増えています。
こうした状況下では、企業側が一括採用のスケジュールに固執すると、理系・留学生などの層と出会えないまま採用活動が終わってしまいます。
通年採用は、学生の多様な動きに対応しながら接点を持ち続けられる手法として、注目を集めています。

通年採用には「柔軟そう」「大変そう」といったイメージが先行しがちですが、実際に取り組む企業が増えているのには理由があります。
ここでは、新卒通年採用によって得られる主なメリットを整理します。
通年採用を行うことで、就職活動の時期が一般的な新卒と異なる人材とも接点を持ちやすくなります。たとえば、
留学生や海外大学に在籍する学生
既卒・第二新卒など、卒業後に就職活動を行う層
といった人材は、一括採用のスケジュールでは対象外になりがちです。通年採用であれば、こうした層とも柔軟に選考を進めることができます。
結果として、年齢や経歴にとらわれず、自社に合った人材と出会える可能性が広がります。
一括採用では、限られた期間の中で選考を進めるため、企業・学生双方が十分に理解を深めきれないこともあります。通年採用では、面談や選考の間隔に余裕を持たせられるため、学生の志向や価値観を丁寧に確認しながら進めやすくなります。
また、必要に応じて、
数日間のインターンシップを選考に組み込む
現場社員との接点を増やす
といった設計も可能です。 その結果、「入社後のイメージが違った」という早期離職の原因となるミスマッチを軽減できます。
新卒採用では、内定辞退が完全になくなることはほとんどありません。一括採用のみの場合、辞退が出た時点で採用活動を再開するのは難しく、欠員を抱えたまま年度を迎える企業もあります。
通年採用の体制が整っていれば、内定辞退が発生した際も、すぐに募集・選考を再開できます。慌てて基準を下げて補充するのではなく、納得のいく人材が現れるまで募集を継続できるため、採用の質を維持できます。

通年採用はメリットだけでなく、導入・運用時につまずきやすいポイントも存在します。事前に理解しておかないと、「思ったより大変だった」と感じる原因になりがちです。
ここでは、新卒通年採用のデメリットと、導入前に押さえておきたい注意点を確認します。
通年で選考を行う場合、説明会や面談、選考対応が年間を通して発生します。そのため、一括採用と比べて採用担当者の関与期間が長くなり、工数が増えやすい点は避けられません。
特に少人数体制の企業では、
対応が後回しになる
選考スピードが落ちる
といった事態が起こりやすくなります。通年採用を成功させるには、採用スケジュールや対応範囲をあらかじめ整理し、無理のない運用設計を行うことが重要です。
通年採用では、決まった時期に一気に学生を集めることが難しくなります。そのため、ナビサイトへの掲載だけでは十分な母集団を確保できないケースもあります。
通年で安定した母集団を形成するためには、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用など、複数の接点を組み合わせて運用する視点が重要になります。
入社時期が分散する通年採用では、研修やOJTの設計が複雑になりがちです。従来のように「4月一斉入社」を前提とした育成体制のままでは、現場の負担が増える可能性があります。
そのため、オンボーディングの仕組み化や、受け入れ体制の標準化が重要になります。採用だけでなく、入社後の育成まで含めて設計することが、通年採用を成功させるポイントです。

通年採用は一部の企業だけが行っている特殊な取り組みではありません。業界や企業規模を問わず、自社の採用課題に合わせた形で導入されています。
ここでは、新卒通年採用を実施している企業の事例を紹介します。

ファーストリテイリングでは、グローバル展開を前提に、国籍や在籍大学にとらわれない採用を行っています。
「ユニクロ大学」という独自の育成機関を持ち、学年を問わず選考を受けられる「通年自由応募」を実施しています。
卒業時期を問わないだけでなく、大学1・2年生でも内定(入社パスポート)を得られる仕組みを構築しており、「就活時期」という概念そのものを取っ払うことで、意欲の高い若年層を早期に囲い込んでいます。

ソフトバンクは、新卒・既卒・就業経験の有無を問わず、30歳未満であれば誰でも通年で応募できる点にあります。また、入社時期を4月だけでなく、10月など個別の状況に合わせて選択できる体制を整えています。
また、一方で、通年採用に伴う「選考工数の増加」という課題に対して、AI面接を活用することで対応しています。選考のスピードを高めながら、評価基準のばらつきを抑え、公平性を保った選考を実現している点も特徴です。

「入社時期の分散」を前提とした運用を行っているのがメルカリです。新卒採用においても通年で募集を行い、入社月も4月だけでなく、各月の1日入社を選べる体制を採用しています。
海外大学の卒業生や、学業・個人開発に打ち込んでいた学生が、それぞれのタイミングで入社する時期を決めることができます。

サイボウズは「100人100通りの働き方」を掲げており、採用も非常に柔軟です。年齢制限を設けず、既卒・第二新卒を含めた「ポテンシャル採用」を通年で行っています。
一括採用の枠組みから外れてしまった層や、一度他社を経験したものの同社のビジョンに共感した若手など、「カルチャーマッチ」を重視した採用を通年で継続することで、定着率の高い組織作りを実現しています。

チームラボの通年採用の特徴は、履歴書や学歴よりも、エンジニアであれば「ソースコード」、クリエイターであれば「制作実績(ポートフォリオ)」を最重視する点です。学生は「自分の最高傑作ができたタイミング」でいつでも応募することができます。
また、卒業年次に関わらず優秀な学生には「内定パス」を出すことがあります。大学1・2年生であっても「将来、チームラボで働く権利」を手にすることができるのです。

通年採用というと、大企業や知名度のある企業の取り組みという印象を持たれがちです。しかし、実際には企業規模にかかわらず、新卒採用の選択肢として通年採用を検討する動きが広がっています。
実際、リクルートワークス研究所が発行する『就職白書』によると、通年採用を予定している企業の割合は年々増加しています。 2025年卒では通年採用を予定している企業は31.9%だったのに対し、2026年卒では35.1%まで上昇しています。
以下は、企業規模別に通年採用を予定している企業の割合を表したグラフです。通年採用は大企業に限らず、300人未満の企業を含めて幅広く検討されていることがわかります。

ここでは、通年採用を検討する際の判断軸として、導入を検討しやすい企業の特徴を解説します。
「ナビサイトに掲載しても、ターゲット層からのエントリーが少ない」という企業にとって、通年採用は大きな転換点になります。
一括採用のピーク時には、学生の注目は大手・有名企業に集中しますが、その時期を外すことで、競合が少ない状態でじっくりと自社の魅力を伝えることが可能になります。
例年、入社直前になって内定辞退が発生し、頭を抱えている企業も導入を検討すべきです。通年採用の体制があれば、辞退が出た瞬間に「欠員補充」のための募集を再開できます。
「4月までに入社が決まればいい」という柔軟な構えを持つことで、採用予定人数を割り込むリスクを最小限に抑えられます。
エンジニア、デザイナー、あるいは高度な研究職など、スキルの見極めが必要な職種は、一括採用のスピード感には馴染みません。
「良い人がいればいつでも会う」という通年採用のスタイルをとることで、スキルレベルの高い学生が市場に現れたタイミングを逃さずキャッチできるようになります。
「10月卒業の留学生を採用したい」「公務員試験を終えた後の優秀な学生と接点を持ちたい」など、ターゲットが多様化している場合、一括採用の枠組みはむしろ邪魔になります。
学生側の都合に合わせて選考のドアを開けておくことで、他社が取りこぼしている優秀な層を独占できます。
通年採用は、単なる「延命策」ではありません。1年を通じて採用活動を行うことで、人事担当者の面接スキルが向上し、社内に「採用は全社で行うもの」という意識が根付きます。
短期的な人数確保ではなく、自社に合った人材を丁寧に見極め、納得感のある形で入社につなげる力を組織として高めていきたい企業にとって、通年採用は有効な選択肢と言えるでしょう。

通年採用は、始め方を誤ると成果が出にくい採用手法です。特に少人数体制の企業では、事前の設計が重要になります。
ここでは、新卒通年採用を始める前に整理しておきたい実務上のポイントをまとめます。
通年採用では「今年は何人採れたか」だけでは判断できません。
月次・四半期単位で見る指標を先に決めておくことが重要です。
たとえば、
月あたりの新規接点数(スカウト返信・説明会参加など)
面談実施数
内定承諾数
など、“途中経過が見えるKPI”を設定しておくと、「今止まっているのは母集団か、選考か」を判断しやすくなります。
通年採用で失敗しやすいのが、「募集ページはあるが、学生から見えなくなる」状態です。
そのため、常に動いている接点を1つ以上持つことが重要です。
具体的には、
ダイレクトリクルーティングで毎月一定数スカウトを送る
少人数のオンライン説明会を定期開催する
SNSや採用ブログで継続的に情報発信する
など、「月1回は必ず学生と接点を持つ」運用を決めておくと、通年でも母集団が枯れにくくなります。
通年採用では、「学生がいつ動けるのか」を前提に設計することが欠かせません。
たとえば、
留学生・海外大生の場合、学期や帰国時期に左右される
研究室所属の学生の場合、年度末・学会前は動きにくい
といった事情があります。 対象ごとに“動きやすい時期・動きにくい時期”を整理しておくことで、選考が滞るストレスを減らせます。
通年採用では、「とりあえず会う」「とりあえず選考する」は非効率です。
その代わりに、初期接点で見るポイントを絞ることが重要になります。
たとえば、
初回面談では志向・就活状況の把握に集中する
技術力や適性を見る選考は後段に集約する
など、選考の役割分担を明確にすることで、少ない工数でも判断しやすくなります。
通年採用では「4月一斉入社前提」の育成は通用しません。
そのため、いつ入社しても最低限同じスタートが切れる仕組みが必要です。
具体的には、
オンボーディング資料を共通化する
初期研修を動画・資料ベースで整備する
OJT内容を簡単に言語化しておく
といった対応をしておくと、現場の負担を増やさずに通年採用を回せます。
ここまで見てきたように、新卒通年採用を成功させるためには、 KPI設計から母集団形成、選考設計、入社後の受け入れ体制まで、考えるべきポイントが多岐にわたります。
一方で、少人数体制の企業では、 「やるべきことは分かっているが、設計や運用まで手が回らない」 と感じるケースも少なくありません。
トラックレコードでは、新卒採用の設計から運用までを支援するRPO(採用代行)を通じて、通年採用を含めた無理のない採用体制づくりをサポートしています。
自社だけで抱え込まず、外部の知見を活用しながら採用を進めたい場合は、選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。


新卒通年採用を検討する中で、「結局どう進めればいいのか」「本当に自社で回せるのか」といった疑問を持つ人事担当者は少なくありません。
ここでは、実際の現場でよく挙がる質問をもとに、通年採用を考えるうえでのポイントを整理します。
最大の理由は、「評価の一貫性」と「継続的な工数確保」です。
長期間にわたって選考を続けると、面接官によって評価がブレたり、時期によって「今は人が足りないから」と基準を甘くしてしまったりするリスクがあります。
これを上手に乗り越えるコツは、誰がいつ見ても納得できる「共通の評価ものさし」をしっかり作っておくことです。
そして、RPO(採用代行)などの採用のプロに頼るのも手です。煩雑な作業を外に任せて、人事が「学生さんとじっくり向き合う時間」を増やすことが、良い採用への一番の近道になります。
一括採用のピークが落ち着く夏〜秋にかけて通年採用を始めるのは、中小・中堅企業にとって取り組みやすいタイミングの一つです。
大手企業の選考が一段落し、内定を持っていながら「本当にここでいいのか」と悩み始めた層や、留学から帰国したばかりの層が動き出すタイミングだからです。
まずは、内定辞退が出やすい夏以降や、専門職の採用に限定して通年で選考を行うなどスモールスタートから始めるのが現実的です。
本記事では、新卒通年採用の仕組みやメリット、導入のポイントを解説しました。 通年採用は、単に「採用期間を延ばす」だけの手法ではありません。学生さん一人ひとりの状況に合わせ、「お互いにとって一番良いタイミングで出会うための、誠実な仕組み」と言い換えることもできます。
一方で、「具体的に何から始めればよいのか」「自社に近い規模の企業ではどのように進めているのか」と迷われる方も多いのではないでしょうか。
トラックレコードでは、最新の採用市場や採用ノウハウをまとめた資料を無料で公開しています。通年採用を自社に導入するためのヒントとして、ぜひご活用ください。

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