2026年8月27日

採用ノウハウ

タレントマネジメントとは?人材データを採用と育成に活かす方法

人材データは集まっているものの、「誰を育てるべきか」「どの人材を採用すべきか」まで判断に活かしきれていない。そんな課題を抱える企業は少なくありません。

タレントマネジメントは、社員のスキルや経験、評価、キャリア志向などを可視化し、育成や採用といった人事施策につなげるための仕組みです。

この記事では、タレントマネジメントの基本的な考え方や導入メリット、進め方に加え、人材データを採用や育成に活かすためのポイントを解説します。

TOPIX100企業は人的資本開示をどう採用につなげているのか

タレントマネジメントとは|経営と人材をつなぐ仕組み

タレントマネジメントを導入する前に、まず押さえておきたいのが、その目的と従来の人事管理との違いです。

ここでは、タレントマネジメントの基本的な考え方と、活用するために把握しておきたい人材データについて整理します。

タレントマネジメントの定義と対象

タレントマネジメントとは、従業員一人ひとりのスキルや経験、評価、キャリア志向などの情報を可視化し、経営戦略の実現に必要な採用・配置・育成・登用へ活用する取り組みです。

「優秀な社員を管理する仕組み」と捉えられることもありますが、対象は一部のハイパフォーマーだけとは限りません。自社にどのような人材がいて、どの領域に人材が不足し、誰にどのような経験を積んでもらうべきかを把握することが目的です。

つまり、タレントマネジメントは単なる「人材データベース」ではなく、経営戦略と人材戦略をつなぐための意思決定の仕組みと考えるとわかりやすいでしょう。

従来の人事労務管理とタレントマネジメントの違い

人事労務管理とタレントマネジメントでは、扱う情報が一部重なっていても、その目的が異なります。

人事労務管理が「人を正しく管理する」ための仕組みだとすれば、タレントマネジメントは「人材の価値をどう事業成果につなげるか」を考える仕組みです。

管理する5つの人材データ

タレントマネジメントで集める情報は、大きく5種類に整理できます。

人材データ

具体例

主な活用場面

基本属性

所属、役職、職種、勤続年数

人員構成の把握

スキル・経験

保有スキル、資格、プロジェクト経験、異動歴

配置、採用要件、育成

評価・実績

人事評価、目標達成度、成果

抜擢、昇格、後継者計画

サーベイ

エンゲージメント、組織状態

離職防止、組織改善

キャリア希望

希望職種、異動意向、1on1の内容

配置、キャリア支援

ポイントは、「集められるデータをすべて集める」ことではありません。経営上の意思決定に必要なデータから揃えることが重要です。

タレントマネジメントが注目される3つの背景

タレントマネジメントが注目されている背景には、単なる人事システムの進化だけではなく、企業を取り巻く経営環境の変化があります。特に大きいのが、人材不足、雇用のあり方の変化、人的資本経営への要請です。

ここでは、タレントマネジメントが注目される3つの背景を解説します。

労働力不足で採用だけでは埋まらない

必要な人材を外部からの採用だけで揃えることは、年々難しくなっています。パーソル総合研究所と中央大学の「労働市場の未来推計2035」(2024年)によると、2035年には1日あたり1,775万時間、人数に換算して384万人相当の労働力が不足すると予測されています。

必要な人材が足りないとき、外部採用だけで解決しようとすると、採用市場の競争激化や採用コスト上昇の影響を受けます。そのため、「誰を採るか」に加え、「今いる人材をどこに配置するか」「誰を育成するか」「社内から抜擢できないか」という視点が重要になっています。

採用と配置、育成を別々に考えるのではなく、一つの人材ポートフォリオとして捉える必要があるのです。

ジョブ型・スキル基準の雇用への移行

職務や必要スキルを基準に人材を捉える企業が増えたことも、タレントマネジメントが注目される理由の一つです。

「営業部の課長」「入社10年目」といった所属や年次だけでは、その人がどのような能力や経験を持つのかは判断できません。

事業戦略から必要なスキルや役割を定義し、現在の人材と比較することで、「採用するのか」「育成するのか」「配置転換するのか」といった選択がしやすくなります。

人的資本の情報開示が義務化された

人的資本をめぐる情報開示の重要性も高まっています。

2023年3月期から、有価証券報告書において人的資本に関する情報の開示が求められるようになりました。
さらに、2026年3月に公表された「人的資本可視化指針(改訂版)」では、個別の指標だけでなく、経営戦略と人材戦略をどのようにつなげて説明するかが重視されています。

ただし、開示が進んでいるからといって、必要な人材像や採用・配置まで具体化できているとは限りません。

トラックレコードがTOPIX100構成企業を調査したところ、人的資本の方針や経営戦略との接続は比較的進んでいる一方、「どの組織に、どのような人材が、どの程度必要か」を示す人材ポートフォリオについては、48%の企業で具体的な記載が確認できませんでした。

では、人的資本経営を「開示」で終わらせず、必要人材の定義や採用まで落とし込めている企業は、何が違うのでしょうか。TOPIX100構成企業を独自に分析し、「経営戦略」から「人材像」「人材ポートフォリオ」「採用」まで、どこで具体化の差が生まれているのかをまとめました。 

タレントマネジメントを導入する4つのメリット

タレントマネジメントによって人材情報を可視化すると、配置や育成、抜擢といった人事施策を、経験や感覚だけではなくデータをもとに検討しやすくなります。

ここでは、経営や人事の意思決定において期待できる4つのメリットを紹介します。

①データに基づく配置で成果が出る

人事異動では、上司の印象や過去の評判など、限られた情報に判断が左右されることがあります。

スキルや経験、過去の成果、本人の志向を可視化できれば、「このポジションに必要な条件」と「社員が持つ能力」を比較しやすくなります。

経験や勘を否定するのではなく、データを加えることで、より根拠のある配置判断ができるようになることがメリットです。

②育成に投資する順番が決まる

研修を一律に提供しても、経営に必要な人材が育つとは限りません。

重要なのは、今後伸ばす事業に必要な人材と、現在の人材との差を把握することです。

たとえば3年後にデジタル事業を拡大するのであれば、「必要な人材が何人いるか」「社内に何人いるか」「育成で何人補えるか」を考えます。

そのうえで不足するスキルを明確にすれば、誰に、どのような育成機会を優先して提供すべきか判断しやすくなります。

③次世代リーダーを早く見つけられる

後継者育成も、タレントマネジメントの代表的な活用領域です。

現在の成果だけではなく、これまでの経験や評価、強み、今後伸ばしたい能力まで継続的に把握することで、将来の管理職や経営人材の候補を早い段階から発見できます。

重要なポジションが空いてから候補者を探すのではなく、数年単位で必要な経験を積んでもらうサクセッションプランにもつなげられます。

④評価への納得感が高まる

人材に関する情報が整理されると、配置や抜擢について説明しやすくなります。

「なぜこの人が選ばれたのか」「次のポジションに進むには何が必要なのか」が見えれば、社員自身も次のキャリアに向けた行動を取りやすくなります。

ただし、データを集めれば自動的に納得感が高まるわけではありません。評価基準や人材要件を明確にし、本人との対話に活用することが前提です。

タレントマネジメント導入の3ステップ

タレントマネジメントは、システムを導入すれば機能するものではありません。
経営課題から目的を定め、必要なデータを集め、実際の配置や育成に活用するところまでを一連のプロセスとして設計する必要があります。

ここでは、タレントマネジメントを導入するまでのプロセスを3つのステップで解説します。

ステップ① 目的と人材要件を決める

最初に決めるべきなのは、「何のためにタレントマネジメントを行うのか」です。

「次世代経営人材を育てたい」「新規事業に必要な人材を確保したい」「DX人材の不足を解消したい」など、経営課題によって集めるべきデータも変わります。

目的が決まったら、その実現に必要な役割、スキル、経験、人数を具体化していきます。

ステップ② 人材データを集めて可視化する

次に、自社にすでにあるデータを棚卸しします。

人事システム、評価シート、研修履歴、従業員サーベイ、1on1など、社内には多くの情報が存在します。最初からすべてを統合する必要はありません。

重要ポジションや重点職種など、目的に関係する範囲から始めるほうが、運用を定着させやすくなります。

ステップ③ 配置・育成を回して振り返る

データを可視化したら、実際の人材施策に使います。

人材が不足している領域に対して、配置転換するのか、育成するのか、それとも採用するのかを判断します。

さらに、「配置後に成果が出たか」「必要な能力は身についたか」「人材要件そのものは正しかったか」を振り返ります。

こうしたサイクルを繰り返すことで、人材データの精度も高まり、タレントマネジメントが単なるデータ管理ではなく、経営の意思決定に使える仕組みへ変わっていきます。

成果が出る企業と続かない企業の分かれ目

同じようにシステムを導入しても、配置や採用の判断が変わった企業と、数年後には誰も画面を開いていない企業に分かれます。

実際には、分かれ目はかなりはっきりしています。
その差を生むのは、システムの機能の多さだけではありません。
「何のために使うのか」「誰が使うのか」「どの意思決定につなげるのか」まで設計できているかが重要です。

ここでは、成果を分ける3つのポイントを見ていきます。

目的が経営戦略とつながっているか

タレントマネジメントが続かない企業では、「人材データを一元化する」「システムを導入する」こと自体が目的になってしまうことがあります。

重要なのは、経営戦略から逆算して「どの事業に、どのような人材が必要か」を明確にすることです。

そのうえで、社内に足りない人材を配置・育成・採用のどこで補うのかを判断します。

人材情報を管理するためではなく、経営課題を解決するために使うことが、タレントマネジメントを定着させるポイントです。

現場の管理職が使い続けられるか

タレントマネジメントは、現場で使われてこそ意味があります。

システムを導入しても、入力を求められるだけで自分の業務に返ってくるものがなければ、現場の管理職にとっては手間が増えるだけです。その結果、更新が滞り、人事だけが画面を開いている状態になりがちです。

使われ続けている企業に共通するのは、現場が「見る理由」を持っていることです。
たとえば、

  • 1on1の前に部下のスキルや経験キャリア志向を確認できるようにする

  • 異動やアサインを検討する場面で、条件に合う社員を探せるようにする

こうして既存の業務の流れに組み込むと、「開かされるもの」から「開いたほうが早いもの」に変わります。
社員本人にとっても同じです。自分の経験やスキル、社内にどのようなキャリアの選択肢があるのかが見えれば、情報を登録・更新する意味を実感しやすくなります。

重要なのは、データを集めることではなく、社員や管理職が使い続けたくなる仕組みにすることです。

▶ 関連記事:
【イベントレポート】「ドンキが好きか?」から始まる人的資本経営〜PPIHの独自システム「タレクエ」と採用ブランディングの極意〜

採用要件まで落とし込めているか

タレントマネジメントで人材不足が明らかになれば、配置や育成だけでなく、採用で補う判断も必要になります。

その際、「DX人材を増やす」「専門人材を強化する」といった表現のままでは採用要件にはなりません。「どの職種か」「どんな経験が必要か」「入社後に何を期待するか」まで具体化する必要があります。

トラックレコードが実施した「人的資本開示調査 2026」でも、人的資本に関する方針や経営戦略との接続、指標開示は比較的進んでいる一方、人材像や人材ポートフォリオ、採用への接続では企業間の差が大きくなっていました。

なかでも人材ポートフォリオについては、48%の企業で具体的な記載が確認できませんでした。タレントマネジメントを成果につなげるには、経営の言葉を、配置・育成・採用で使える人材要件へ落とし込むことが重要です。

では、「開示」で終わる企業と、「採用」までつなげられる企業では、何が違うのでしょうか。

「人的資本開示調査 2026」では、TOPIX100構成企業を分析し、経営戦略から人材像、人材ポートフォリオ、採用まで、どこで具体化に差が生まれているのかを整理しています。人的資本経営を、開示だけで終わらせず採用までつなげるためのヒントを知りたい方は、ぜひご覧ください。

タレントマネジメントに関するよくある質問

ここでは、タレントマネジメントを検討する企業からよく挙がる疑問をまとめました。

関連する概念との違いやシステム導入、運用が定着しない理由について簡潔に解説します。

タレントマネジメントとピープルアナリティクスの違いは何ですか?

タレントマネジメントは、人材データを活用して配置・育成・採用・登用などの意思決定を行う仕組みです。

一方、ピープルアナリティクスは、人材に関するデータを分析し、意思決定に役立つ示唆を得るための手法を指します。

そのため、ピープルアナリティクスはタレントマネジメントを高度化するための手段の一つと考えるとわかりやすいでしょう。

タレントマネジメントシステムの費用はどれくらいですか?

タレントマネジメントシステムの料金は、従業員数や利用する機能、初期設定・導入支援の有無などによって大きく異なります。個別見積もりとしているサービスも多いため、一律の相場だけで判断するのは難しいでしょう。

価格だけで比較するのではなく、「どの意思決定に使いたいのか」「誰が日常的に利用するのか」を整理したうえで必要な機能を選ぶことが重要です。

機能を増やしすぎた結果、現場が使いこなせなくなっては本末転倒です。
導入目的に必要な機能と、実際の運用負荷のバランスまで確認するとよいでしょう。

タレントマネジメントが続かない原因は?

よくある原因は、導入目的が曖昧なままデータ収集から始めてしまうことです。

データを登録しても、配置・育成・採用などの意思決定に使われなければ、現場にとって入力する意味がなくなります。その結果、データが更新されなくなり、情報の信頼性が低下し、さらに利用されなくなるという悪循環が起こります。

経営課題と目的を明確にしたうえで、まず実際の人事判断に使うこと。社員や管理職が使う理由をつくれるかどうかが、定着の分かれ目になります。

経営課題から逆算し、人材の価値を企業成長につなげよう

タレントマネジメントで重要なのは、人材データを集めることではなく、経営戦略から必要な人材を明らかにし、採用・配置・育成・登用につなげることです。

特に、社内だけでは補えない人材を採用する場合は、必要な役割や経験を採用要件まで具体化し、候補者に伝わる形へ落とし込む必要があります。

トラックレコードでは、採用戦略の設計から採用ブランディング、スカウト運用までを一気通貫で支援しています。戦略をつくるだけで終わらず、実際の候補者獲得まで伴走できることが特徴です。

「必要な人材像は見えているが、採用要件や具体的な施策まで落とし込めていない」という場合は、トラックレコードにご相談ください。

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