2024年5月15日

イベントレポート

「ML Career Night #1|生成AI時代の機械学習エンジニアのキャリア戦略」 イベントレポート

生成AIやLLMが登場し、大きなビジネスの変革が起きているなか、AIを活用したプロダクト開発に取り組む企業が増えています。

それによって、機械学習領域で専門的な知識やスキルを持つプロフェッショナル人材の需要はより一層高まっています。

こうした機械学習分野で成果を出し、成功を収めるためには、キャリア戦略を描くことが重要になるはずです。

そこで、「ML Career Night #1|生成AI時代の機械学習エンジニアのキャリア戦略」と題し、機械学習領域で活躍する4名のプロフェッショナルを招いたイベントを2024年3月28日に開催しました。

登壇者のLTやクロストークでは、機械学習領域でバリューを発揮していくための心構えやキャリア戦略のヒントが語られ、生成AI時代のキャリアを考えるための「学び」や「気づき」が得られる会となりました。

LT#1「生成AI・LLM時代における 機械学習エンジニアとしてのキャリア戦略・開発戦略」

松村 優也氏
株式会社LayerX
バクラク事業部 機械学習グループ マネージャー

大学院では情報検索や情報推薦といったテーマの研究を行っていて、新卒ではWantedlyに1人目のデータサイエンティストとして入社しました。

推薦システムチームの立ち上げを担い、同チームのリーダーやマネージャー、さらには「Wantedly Visit」のPdMなど、色々なポジションを歴任してきました。

その後、2022年9月にLayerXへ機械学習エンジニアとして入社しました。

現在は機械学習グループのマネージャーを務めています。

早速ですが、まずは「生成AI時代」でそもそも何が変わったかについてお話していきたいと思います。

私は「AI・機械学習の民主化が起こった」と考えています。

生成AIやLLM(大規模言語モデル)の普及によって、誰でも容易に高性能な機械学習モデルを活用できるようになりました。

例えばChatGPTなどを利用することで、機械学習の知識や実装が不要でも、文書要約や情報抽出、質問応答などの自然言語処理タスクを解くことが可能になったほか、OpenAI APIなどを利用すれば、簡単な機械学習の知識や実装のみで、自然言語処理を活用した機能開発もできるようになったわけです。

こうしたなか、生成AI時代における機械学習エンジニアのキャリア戦略を描くうえで大切にしているのは、「機械学習をコアに据えたプロダクト開発に携わる」ことです。

つまり、機械学習を利用するからこそ、十分な価値を提供できるプロダクトが開発できるわけで、機械学習が「nice to have」ではなく「must have」になると捉えています。

ただし、これは手段の目的化というよくあるアンチパターンに陥っているわけではありません。あくまで達成したい目的のために、AIや機械学習の技術の可能性や将来性を信じ、フルベットしているというのが私の考え方です。

また、「must have」だからこそ、機械学習モデルの開発やその維持・管理、継続的な精度改善といった機械学習エンジニアの仕事が大いに活きてくると思っています。

もちろん、「nice to have」を否定しているわけではありませんが、提供価値や売り上げに対するインパクトが限定的で、「経済合理性がないのに、仕事をするための仕事を作っていないか」を考えなくてはなりません。

加えて、AIの民主化によって、ある程度の性能のものであれば、LLMなどを活用することで、容易に開発できるようになっています。

だからこそ、機械学習が従来の仕事をやるべきかどうかについても、考えていく必要があるわけです。

また、エモめの話にはなりますが、せっかく一度きりの人生をかけるなら”nice to have”なものに賭けたくないなという気持ちもあったりします。

LayerXには、紙や画像形式で存在する帳票などから必要なデータを抽出する「AI-OCR機能」があります。

非構造化データの構造化を行う「must have」機能になっていますが、ユーザーとしては情報抽出がしたいのではなく、支払い処理や仕訳処理の業務を行っていきたいわけです。

後続業務をするためには「データ化」が必須であり、その精度が0.1%上がることで、プロダクトとしての価値を提供できるユーザーが増えていくといえるでしょう。

その一方で、機械学習を活用した「must have」が生まれ続けるかどうかという視点も大事になってくると私は考えています。

「must have」もひとつのみに取り組み続けていれば、いずれは限界が来てしまいます。

なのでLayerXでは「コンパウンドスタートアップ」戦略を取っていて、バクラク事業部でも半年にひとつは新しいプロダクトを生み出せるように意識しています。

プロダクトごとの提供価値を作ることに加え、各プロダクト間の連携自体にも価値を見出していくことが重要になるため、結果として「やるべきこと」が生まれ続け、機械学習組織も拡大していく。

このようなサイクルを作れるかが大事になってくるでしょう。

次に、機械学習エンジニアとしての開発戦略を紹介したいと思います。

「AI-OCR機能」も、現時点ではコストや性能、推論速度、可用性などを鑑みると、自前で開発していく判断をしていますが、近い将来ではLLMにリプレイスされる可能性も十分にあると考えています。

新しい公開LLMやAPIの採用にあたっては、顧客の提供価値を正しく計測できるような性能評価の設計や、ファインチューニングによる独自モデル作成を実現させるための質の高いデータセットの構築が求められるでしょう。

ベースとなるモデルが日進月歩で進化するなか、モデル単体の性能向上は独自のデータセットのみでしかなし得ない世界も来るかもしれません。

そうなれば、新しいモデルを高速に検証し、顧客に安定した価値を届けるMLOps/LLMOpsがより重要になってくるでしょう。

  • ファインチューニングや性能検証

  • デプロイ

  • システムへの組み込み

  • リリース後のモニタリング

これらの一連のワークフローを高速かつ安定的に回していく仕組みがなければ、世の中の変化のスピードについていけなくなってしまいます。

さらに、AIやLLMが当たり前となった世の中においては、AIやLLMで体験を構築すべき部分と人が介在して体験を設計すべき部分を見極めたり、AIの精度が100%でないことを踏まえた上で体験を損なわないフォロー策を考えたりと、「AIを前提とした理想のUX」を追求していかなければなりません。

とはいえ、内製の過程で得られた知見や能力、資産は将来的に必ず役立つと考えているため、「あえて内製を諦めない」という姿勢を大事にしています。


登壇資料はこちら

LT#2「生成AIプロダクト開発の難しさとMLエンジニアのネクストキャリア」

北川 和貴氏 
株式会社Gaudiy
AIチーム PO / MLエンジニア

2022年にGaudiyヘ入社しAIチームを立ち上げ、現在はPOとしてAI組織づくり、AIプロダクトの開発、エンジニアリングデザイン、モデル開発などに携わっています。

Gaudiyは「ファンと共に、時代を進める。」をミッションに掲げ、ファンが国境を越えて共創する経済圏「ファン国家」の実現を目指すWeb3スタートアップです。Web3を活用したコミュニティプラットフォーム「Gaudiy Fanlink(以下、Fanlink)」というサービスを提供しています。

最近では「AI×Web3」に舵を切り、生成AIを活用したAIサービスの「Fanlink」への実装を進めています。

「Fanlink」におけるLLM Agentの活用については、主に以下の2つのコンテキストでPoCを進めています。

①SNSコミュニケーション特有のハードルの高さを解消できないか

②ユーザーごとにカスタマイズされた動的なユーザー体験やコンテンツを提供できないか

文章作成や情報のキュレーション、SNSへの自動投稿からキャラクターAIとの対話、ユーザー固有のナラティブに沿ったクリエイティブの生成など、LLM Agentをどのように活用すればインパクトを最大化できるかの検証を行っています。

AIチームはサービスやアプリケーションの実装、その周辺のR&Dを進める「Generative Agent」、モデル評価やデプロイフロー、CT(継続的学習)などのLLM開発のライフサイクルを開発する「LLM Ops」、LLM以外の生成AIを活用する「Image-Voice Generation」の3つのユニットで構成されています。

生成AIの技術進化が早いからこそ、自前でまかなう開発工数の判断や、AI精度を見越したプロダクトの要求調整など、「生成AIプロダクト開発の難しさ」を感じています。

ビックテックのリリースやOSSのライブラリの進化によって、突如としてコストが従前の1/3になったりと、自前でやるべき部分や開発工数の見積もりが非常にしづらい状況下に置かれています。

GaudiyのAIチームでは、R&Dとアプリ開発の距離を近くしていて、同じチームメンバーで行うように留意しています。

また、スクラム開発を採用していますが、スプリント期間を1〜2週間で設定するのではなく、2日ごとに小刻みに状況や進捗をシンクし、少しずつ修正していく方法を取っています。

加えて、AI戦略ロードマップを敷く際は、データ戦略などGaudiyでしかできない“自社ならではの強み”を意識するように心がけています。

一方で、プロダクトが提供するコアな価値に近いところでAIが使われることになったため、「関係者の調整」が大事になってきています。

言ってしまえば、“AIでよしなに仕上げて”というあいまいな握り方で進めると、リリース直前で揉めやすくなってしまうわけです。

私自身もMLエンジニアのキャリアを歩むなかで、クライアントに「AIでいい感じに開発してほしい」と依頼され、アウトプットしたところ、期待値が擦り合わなかったことを何度も経験していて、この辺りは非常に難しいことだと認識しています。

なので、AIを理解している人がプロダクト開発の上流工程から入り、「なんでもできる“魔法”のAI」にならないように関係者と折衝し、できる限り定量的に測れる「AI精度」を定義していくことが重要になります。

こうしたなか、弊社ではMLエンジニアの採用は順調に進んでいるものの、AIに精通したPdM(AI PdM)の採用には苦戦しています。

統計や数学の知識から、的確に技術選定および開発戦略の立案を遂行し、AI精度を見極めた上でステークホルダーとの認識合わせを行える人材は、市場にほとんどいないのです。

ML専門家の市場価値は右肩上がりに上昇していて、ものづくりの楽しさを享受しやすい一方で、AI PdMはプロダクト開発におけるステークホルダーとの調整が大変だったり、やりがいを感じにくかったりするため、こうした状況を作っているのではと私は考えています。

では、生成AI時代のMLエンジニアはどのようにキャリアを考えていけばいいのでしょうか。

繰り返しになりますが、推薦エンジンのようにこれまではコンテンツをいかに適切に届けるかという支援的なAIの活用が中心でしたが、生成AIがもたらす自由度の高さによって、AIがコンテンツ生成のようなプロダクトのコア体験提供の中心を担えるようになりました。

それはつまり、ユーザーの「最大公約数的なペインの解決」ではなく、ユーザーごとに「カスタマイズしたペインの解決」につながっていくわけです。

さらに、既存のビジネスに生成AIを掛け合わせていくことで、無限に課題解決していける余地が生まれるので、そこの実現に向けた再現性やチームビルディングが求められるでしょう。

そういった観点では、「エンジニアリングデザイン」と「実行力」を高めていくことで、MLエンジニアの中長期的なキャリア形成に役立つのではないでしょうか。

登壇資料はこちら

LT#3「これまでのキャリアとこれからMLエンジニアとしてどう動くか」

柏木 正隆氏
コミューン株式会社
プロダクト&データ部・機械学習エンジニア(ML/DSチームリーダー)

新卒でNTTコミュニケーションズに入社し、SEとして2年間ほど働いたのちAIベンチャーへキャリアチェンジを図りました。

そこでは製造業向けの異常検知ソリューションのプロジェクトに関わり、工場や設備のセンサーデータを用いた異常の検知や不良品の要因や製品の外観検査、組み立て製造の作業者解析など、さまざまなプロジェクトを経験しました。

その後、toC向けのサービスを展開する事業会社へ転職し、機械学習システムの基盤構築やMLOpsの推進を行ったほか、データエンジニアリングや検索システムの改善など機械学習以外の領域にもチャレンジしてきました。

現在はMLチームのリーダーとして、推薦システムの開発・生成AIを使った機能開発などを行うだけでなく、機械学習システム全般に責任を持つ役割を担っています。

コミューンでは、あらゆる組織とひとが融け合うコミュニティサクセスプラットフォームを開発運営しています。最近では生成AIを活用したPoCプロジェクトを立ち上げ、コミュニティ運営の効率化やコミュニティマネージャーの負担軽減などに生成AIが活用できないか模索し、検証にも取り組んでいます。

これまでのキャリアを改めて振り返ると、幅広くジェネラリストとしての素養が求められてきたかなと感じています。

そんななか、近年生成AIの台頭によって、必要とされるスキル要件も変化しているため、どのようなスキルを学べばいいのかを見定めるのが難しくなっている現状があります。

ChatGPTやMicrosoft Copilotなどの登場によって、今までスペシャリティな技術だったのが、ジェネラルなものになってきており、MLエンジニアではなくても、AIプロダクトを開発できるようになったのが大きな変化だと感じています。

だからこそ、キャリアデザインを考える上でのフレームワークである「Will・Can・Must」を軸に、自分の武器や尖っている要素を棚卸ししつつ、専門以外の周辺領域に染み出していくことが重要だったり、やりたいことや目的から逆算して必要なスキルを身につけていくことが大事になっていくでしょう。

一方で、機械学習とビジネスの関係性を考えるのも必要です。

生成AIが台頭した今、果たして継続的にAIやML領域への投資がなされるかは別問題なわけであり、機械学習が事業の成長サイクルにどう寄与するのか、組織に機械学習を根付かせていくために何をするべきなのかを、しっかりと考えて説明していくことが求められます。

そうしたなかで、これからのキャリア形成を考えてみると、AIの著しい変化が起こる以上、再現性のあるキャリアパスを作るのは難しいと思っています。

しかし、MLがプロダクトを通して事業成長に貢献し、自分たちの力をより発揮できる領域を自ら開拓し、示していくチャレンジを続ければ、新しいキャリアパスにつながっていく可能性もあるでしょう。

最後に、技術領域として今まで以上に必要になってくるものとして、Data-Centricな取り組みがあると思っています。

私は「モデルのコモディティ化」が進むのではと見立てており、サービスやドメイン独自のデータをどのように扱っていくかが鍵になっていくと思います。

Data-Centricなアプローチによって、データを集める・品質を保つ・補強する・評価するといった、データの価値を高めていくことが、生成AI時代ではより求められてくるのではないでしょうか。

登壇資料はこちら

LT#4「ML組織のジェネラリストについての思考」

高野 秀基氏 
株式会社バンダイナムコネクサス

データ戦略部 Machine Learning Platformセクション マネージャー

私は2015年からHR領域のデータサイエンティストとしてキャリアをスタートし、その後はデータアナリストやMLエンジニアの職種を経験して、2020年にバンダイナムコネクサスへ入社しました。

そこでML組織の立ち上げを行い、現在は組織長としてバンダイナムコグループ全体のML活用の推進を担っています。

バンダイナムコネクサスは展開する多彩な事業やIPとお客様を有機的につなぐエンターテインメントハブ企業です。

その中にバンダイナムコに向けたDX組織としてデータ戦略部があり、機械学習ソリューションの提供を行うのが、私の所属するMachine Learning Platformセクションとなっています。

まず初めに、私が問いとして投げかけたいのは「ML職種が活躍できる状況とは何か?」ということです。

図のように、現状においてML職種が活躍できる領域はかなり限定的だと言えます。

概して、多くの企業では少人数からML組織が始まるため、いわば恵まれた状況にたどり着くまでに次のようなスタックが生じやすくなっています。

①データエンジニア組織と距離が遠い

②プロダクト開発組織と距離が遠い

③ビジネス課題の理解および伝達が不足している

それぞれの解決策を挙げると、まず①に関してはデータエンジニア組織とML組織が仮想的にでもひとつになり、SLI/SLOを同期し、インシデント時はポストモーテムを双方がいる場で書くことが理想だと考えています。

また、ML組織とプロダクト開発組織の距離が遠ければ、適度な粒度感のグランドスケジュールを敷き、双方の合意のもとでスタートしていくことが大切です。

MLモデルの継続的な改善をあらかじめ見据え、プロダクト開発側のプロダクトバックログに入れていくのが望ましい形だと言えるでしょう。

そして、答えの大半はデータに無く、ドメインに転がっているため、ビジネス課題における理解不足を解消するためには、案件初期からMLエンジニアをアサインし、その課題をML PdMと共に紐解いていくことです。

要はML組織単体ではワークせず、周辺領域に目配せしていくことが重要になります。

弊社ではそうした「周辺領域への目配せ」を念頭に入れた採用活動を実施しています。

例えば、ML PdM志望のKaggle Masterが中途入社した事例だと、ML PdM業務とMLエンジニアの二足の草鞋を担うジェネラリストとして活躍しています。

また、MLOps経験者かつデータエンジニア歴の長い中途採用者は、ML基盤の半分以上はデータエンジニアリング領域のため活躍シーンが多く、結果的にEMも兼務いただいています。

つまり、各ML職種は周辺領域にスペシャリティがあると、ジェネラリストとして活躍できる機会が増えるということです。

そうは言っても、スペシャリティの習熟は容易なことではありません。それであればチーム内でそれぞれを補えば良いわけです。

なのでチーム内の共通認識を育て、それぞれの強みを補完していく取り組みが大切になります。

弊社では、MLメンバー全員でひとつの技術書を読んで議論する「もくもく会」や、漠然とした課題感を共有してディスカッションする「未来会」を定期的に開催しています。

また、ML Opsエンジニアは朝会を開いているのですが、そこにはML PdMやMLエンジニアも参加して、ML案件のなかで隠れがちなビルドトラップをレビューし合っています。

このように自己組織化のための基盤作りを実行することで、ML組織に属する各メンバーのスペシャリティをOJTし合う機会が増え、結果的に次のキャリアを拓くきっかけにもなるでしょう。

登壇資料はこちら

生成AI時代は​​ジェネラリスト志向 or スペシャリスト志向?AIやMLの最良なUI/UXは?クロストークで考える技術談義

イベントの後半では、参加者から寄せられた質問にお答えいただくクロストークセッションが行われました。

──機械学習関連の研究を行っている大学4年生だが、MLエンジニアとして新卒で求められるスキルを伺いたい

松村:学会での発表やインターン先での実務経験など、「自分の伸びしろ」を証明できる実績を見せられるといいと思いますね。

北川:学生だからこそ、自分の好奇心が枯渇するくらいまで掘り下げてみて、とことんやりきってみるのがいいかもしれません。


社会人になると周りのすごい人はいくらでもいるので、そのなかでも自信を持てるスキルを突き詰めるといいのではないでしょうか。

柏木:新卒はどれだけポテンシャルを持っているかが問われるので、貪欲に技術を学んでいく姿勢や考え方が必要不可欠になってくるでしょう。

学生だからこそ時間はあると思うので、ひとつのことに対して追求していくことが重要です。

高野:新卒の方々は、どのようなことを突き詰めるかというスペシャリスト路線に加え、「なぜやるか、いかに泥臭くやるか」に力点を置いた方がその後のキャリアを広げるきっかけにもなると考えています。

──登壇者の方はスペシャリスト志向なのか、ジェネラリスト志向なのかをお聞きしたい。

松村:どちらかと言えば、ジェネラリスト志向ですが、MLエンジニアはモデリングだけをやるわけではないと思っていて。

あくまでプロダクトを作るのがやりたいことなので、それに必要なら何でもやるのが、自分の中で思うMLエンジニアの定義です。

北川:キャリアの最初の頃はスペシャリスト志向でしたが、今はジェネラリスト志向ですね。昔はハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)が求められるレイテンシーのシビアな業界にいたので、ある種マニアックな技術を掘り下げていたんです。

でもそれをやっていて気づいたのは、「大きな事業を手がけようと思ったら、ひとりでは難しい」ということでした。

そこから、チームビルディングの大切さを理解するようになって、徐々にジェネラリスト志向へとマインドがシフトしていきましたね。

ただ、両者は対立するものではなく、目的や目標から逆算し、必要に応じてハイブリッドに交わらせていくことがとても重要だと考えています。

柏木:私もジェネラリスト志向だと思いますが、自分の強みは必要になってくるでしょう。「ここは誰にも負けない」という武器を持ちつつ、周辺領域にも視野を広げていき、周囲のメンバーと補完し合えるように立ち回ることも大切になります。

高野:LTのタイトルにもあるように、私はジェネラリストとしてキャリアを歩んできましたが、ジェネラリスト志向のさらにその先もあると感じています。

MLエンジニアで例えても、単にモデルの世界観だけでなく、プロダクト開発側に働きかけて自ら企画を先導して、ピュアなPdMへと移っていく人もたくさんいると思います。

個人的には、機械学習に限ったスペシャリスト志向もしくはジェネラリスト志向という二択から外れていく道も、それはそれで楽しいのではないかと思っていますね。

自分の興味関心ある方向に突き進んでいった方が、より仕事人生も豊かになるのではないでしょうか。

──MLやAIを活用した結果のUI/UXが重要になってくるなか、プロダクトを考えることが多い登壇者の皆さまに、その辺りについて考えていることがあればお聞きしたい。

松村:やはり、MLやAIに基づいた新しいUI/UXが求められていると思います。

よく言われるのが「MLやAIは間違えることがある」ということ。

MLやAIが間違えた出力をしてしまった際に、ユーザーの体験を損なわないようにするためにはどうすればいいかを考えることが大事になります。

解決策の例として、間違えた結果を確認しやすい、気づきやすい、修正しやすいなどの体験を提供するといいのではないでしょうか。

あるいは、正しいデータを入手して次の改善につなげていき、ファインチューニングや性能評価に活かしていく仕組みを作るのも必要になると思います。

北川:私はMLやAIを使ったUI/UXを考えるときに以下の4つの軸があると考えています。

  • 人より早いか

  • 人より安いか

  • 人より幅広くできるか

  • 人より深くできるか

今までのAIは、安さ・早さと広さが大きなメリットとなっていましたが、生成AIが登場したことで深さも出てきたわけです。

なので、最近のプロダクト開発では、AIによる深みをどう反映していけるかを意識していますね。

柏木:生成AIが出てきたことで、インターフェースの種類が増えたと感じています。今までは人間が手で入力すると、裏で機械学習が走るといったものだったわけですが、生成AIはテキストでも音声でも自然言語さえ入力すれば、よしなに解釈してアウトプットしてくれる。

そうした新しいインターフェースの選択肢が出てきたので、状況に応じて最適なものを選んでいくことが重要になるでしょう。

高野:toC向けサービスに限定してお話しすると、推薦などのUI/UXは世の中にて成熟してきていると感じています。

例えばTikTokは、ショートコンテンツ化することでアイテム数を増やし、レコメンド機会を増加させ、ユーザーの滞在時間を伸ばすという事例になっています。

一方でLLMについては、まだtoCサービスの中でものすごく成功した事例は出ていないはずです。

要はLLMという技術を活用するための“知の高速道路”ができて、それが社会に受け入れられることが大事で、その後にLLM独自の見せ方や最良なUI/UXが出てくるのではと思っています。

toC向けLLMでいえば、LLMは人間で言う「責任」の概念をまだ手に入れていないので、出力した答えの信憑性や信頼性に対して一般社会が受け入れていくには、それなりの時間を要すると個人的には感じています。が、社会がLLMを受け入れること自体はいつか必ず起きるでしょう。

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