2024年12月4日

イベントレポート

ログラスの急成長の裏側を大公開、黎明期から拡大期までの各フェーズでとった戦略・施策とは?|DXD2024登壇レポート#2

2024年7月に開催された日本CTO協会主催「Developer eXperience Day 2024」にて、「強いテック組織をつくるために 採用ブランディング戦略をつくれるCTOになるワークショップ」を開催しました。

ノウハウや事例をお伝えするだけでなく、当社で開発したフレームワークやテンプレートを用いて自社のことを振り返ってみる機会や、参加者同士でシェアタイムも取り入れ、大好評をいただきました。

今回の開催レポートでは、弊社・野崎のプレゼンテーション、およびゲストとしてご登壇いただいた株式会社ログラス 取締役・ 日本CTO協会 理事坂本 龍太 氏のプレゼンテーションをお届けします。

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ログラスのブランディング戦略と実践

▼スピーカー
株式会社ログラス
取締役 CTO(登壇当時) 坂本 龍太

弊社はクラウド経営管理システム「Loglass(ログラス)」を運営しているSaaSのスタートアップで、2019年5月に創業してから急成長を続けています。最近はテレビCMやタクシーCMを放映しており、会社の知名度を上げていくフェーズに差し掛かっています。

Loglassはエクセルやスプレッドシートなど、社内に点在する重要な経営情報を加工し、統合することで経営の意思決定に活用できるようにするサービスとなっています。

これまで、東証プライム市場の上場企業を中心とした大手企業に多く導入いただいており、国内における経営管理システムでは高い評価をいただいています。

弊社におけるテックブランディングについては、3つのフェーズに分けてお話したいと思います。

  1. 黎明期:2019年5月〜2022年12月(エンジニア約20名まで)

  2. 助走期:2022年12月〜2023年12月(エンジニア約30名まで)

  3. 飛翔期:2024年1月〜現在(エンジニア約40名)

難易度が高くても「優秀なエンジニアだけが所属する開発組織」を目指した黎明期

最初は黎明期ですが、ログラスは五反田にあるマンションの一室から始まりました。

この頃は、正社員エンジニアが私しかおらず、他は業務委託のメンバーと一緒に開発を行っていました。そんななかでも、早くプロダクトをリリースしてPMFを実現することが最重要課題でした。

プロダクトの目標としては、先行プレイヤーの1/10以下の機能で、経営管理業務が未経験なユーザーでもすぐに使える優れたUIを実現し、10倍以上の価値を届けることを掲げていました。

一方で上場企業の機密情報を取り扱う以上、セキュリティ要件が高く、データ構造の手戻りは許されない制約があったのです。

こうしたプロダクトを開発できるのは、技術力の高いエンジニアしか扱えないと考えていましたが、いざ正攻法で採用しようと試みても絶対に興味を持ってもらえないと感じていました。

会社の立ち上げ当初は、ブランディングや採用広報に割くリソースや資金がなかったほか、会社の成長を考えたときにフロントとバックにDBがひとつ存在するというシンプルなアーキテクチャにしたため、技術的な面白さもありませんでした。

他方、組織とカルチャー、プロダクトを立ち上げる初期のメンバーなので、高い技術力とスターとアップマインドが欠かせない要素で、求める理想が高いのもエンジニア採用における課題となっていました。

色々と悩んだ末に目指したポジショニングは、「理想的な開発手法」と「プロダクトを真ん中に置いた優れたカルチャー」の双方を持つ未来あるスタートアップでした。

CEOがドメインエキスパートであり、全社員でデータ構造やデータモデルに向き合い「お客様にとって本当に価値あるサービスをつくる」ことをカルチャーとして醸成していきました。

さらに、マンションの一室という環境も「逆に面白い」と思ってもらえるように、ブランディングをしていき、ワクワク感を伝えるために結構な頻度で候補者の方をオフィスにご招待して寿司パーティーも開催していました。

具体的な戦略を話すと、スタートアップで事業やカルチャー、プロダクトなど全てを0から創っていきたいと思うシニアエンジニアをターゲットとして選定しました。また、初期からコードの品質に徹底的にこだわり、ポジショニングを崩さないように心がけていましたね。

これは難易度が高い話ですが、チームに優秀なエンジニアがいないと、そもそも優秀なエンジニアは採れないと思っていたので、「優秀なエンジニアだけが所属する開発組織」を目指しました。

次に、施策については「誇れるコードを持つ強い開発チーム」を目指し、我々の開発組織が試行錯誤を繰り返しました。技術的負債に立ち向かう「天引き方式」については、AWS Dev Day 2023「質とスピード 特別編」で取り上げていただきました。

また、CEOを含めた全員が日常的にデータモデリングに加わり、データ構造と向き合ってきたからこそ、今でもCSやプロダクトマネージャーなどを巻き込んだDDDをやれています。ここについては、プロダクトを真ん中に置いた優れたカルチャーが育まれたと思っています。

ブランディングを大事にしつつも、全エンジニアがX(旧 Twitter)で発信し、Xでスカウトを行ったり、全社でリファラル採用を推進したりしています。キャッチーなタイトルの記事やバズりそうな記事を執筆し、その内容に反応を示した方にスカウトを送ったりしていますね。直近でも40~50%はリファラル経由でエンジニアが入社しています。

一方で、初期のスタートアップは「どんな人が入れば活躍できるのか」がわからないため、入社前の副業を必須とし、エンジニアだけではなくCSや営業も含めた全社員が面談に出る手厚い先行体験を設計しました。

選考の工数はかかってしまいますが、こうすることで、入社後のミスマッチを減らせると考えていたからです。

このような取り組みを通じて、「DDDもスクラムも当たり前」の組織カルチャーを形成できたこと、見ていて気持ちのいいくらい“癒されるレベル”のコード品質を実現できたのが、主な成果になっています。

エンジニアは日々コードを触るものですし、自分たちが普段向き合っているものがイけてないと良くないと思うので、誇れるコードを持つ強い開発チームを初期の頃から意識していたのは、今振り返っても大事だったなと感じています。

組織全体の一体感や技術的な面白さや楽しさを伝えた助走期

続いて助走期(エンジニア約30名まで)に取り組んだことを話していきたいと思います。

この時期に、現在は事業執行役員 VPoEを務める伊藤が入社したことで、大きく開発組織も変わっていきました。伊藤は私が思いつきでやってきたことを全て仕組み化し、ブランディングも戦略的に進化していったのです。

助走期の課題としては、順調にチーム組成できた一方で採用の再現性が小さく、アトラクト要素となる強い武器もありませんでした。また、ブランディングの方向性も定まらずに迷子になってしまっていたのです。

そのほか、組織拡大に伴い階層や職種が増えたことで、これまで築いてきたカルチャーが薄まっていく危機感を抱いていました。

この課題を解決するために、採用マーケティングファネルの「入社後」に着目し、弊社に入ってきた人がどういう愛着を持ち、発信や紹介をしていくのかという観点からブランディングを始めていきました。

急成長期においても、強いエンジニアと面白い技術的テーマが続々と増え、開発組織が順調に進化し続けているのに加え、スタートアップの中でも最も勢いがあり、それは開発組織の貢献が大きいからだと思っていただけるようなポジショニングを目指しました。

戦略ですが、0→1の環境に飛び込むのではなく、優れたカルチャーとメンバーがいる組織で、プロダクトの成長期に関わりたいエンジニアと、社内の方々に自分たちの良さを言語化して伝えていきたいと思っていたので、社内のエンジニアをターゲットにしました。

また、事業が急成長しているログラスでも、以前と変わらずに優れたカルチャーと技術的な取り組みが健在していて、そこに関わることの面白さや楽しさを伝えていこうと考えていたのです。あとはエンジニア含め、全社員の発信力が非常に大きく、一体感のある組織というのもブランディングで見せたかった部分でした。

施策としては、2022年12月に全社員でアドベントカレンダーに取り組みました。さまざまな職種の観点からログラスについて発信することで、結果的にリファラル採用に繋がったりと、一定の成果にも寄与できた施策だったと感じています。

2023年3月からは「Loglass TECH TALK」というYouTubeでの生配信をスタートし、顧客に価値を届けるプロダクト開発の実践法や技術的な品質と開発生産性のバランスの取り方などをテーマにしたイベントを行いました。

そして、プロダクトを真ん中に置いた組織カルチャーを創っていくという観点では、エンジニアとCSがDDDの実践事例を外部イベントで語ることにトライしました。

2023年7月には、絶対に毎週記事が出る技術マラソンブログ「Loglass Tech Blog Sprint」を始めました。技術ブログの継続はなかなか難しいと言われていますが、自分たちがどういった内容を発信したいのかというのを拾い上げ、図のようにグランドルールを定めたことで、今でも技術ブログの継続ができています。

ブランディングを進めてきたことで、次のような成果を出すことに成功しました。

  • 全社員note発信の実現

  • YouTube配信は300人参加、connpass登録者数811名

  • Loglass Tech Blog Sprintは、未だ継続中

  • 約30人の組織に(新卒採用でも成果)

「Tech Value」を策定し開発組織の価値観を言語化した飛翔期

最後に飛翔期(エンジニア約40名)で取り組んだことを述べますと、現在は複数のフィーチャーチームにAI、CRE、E&Pで構成される開発組織になってきたため、我々が大事にしてきた価値観を言語化したTech Valueを策定しました。

  • 顧客への本質的な価値提供

  • 学びと適応

  • 技術的卓越性の追究と還元

開発組織が大切にしてきた活動原則を上記の3つに集約するとともに、「今までの当たり前基準を越え、より高い基準へと移行していく」のを組織の目標に定めました。

また、ログラスの魅力を、ソフトウェア開発における「本質的な複雑性」と「偶有的な複雑性」の2つの複雑性を熟知し、それらに対処できる技術とカルチャーを兼ね備えていることと、定義しました。

採用ブランディングのビジョンやミッション、テックバリューの策定、ログラス公式Xアカウントや公式はてなブログの開設、技術イベントのスポンサーなどを施策として実施しました。

エンジニア採用の体制づくりにも力を入れていて、PdMやデザイナー、エンジニア採用の専任人事を2名アサインし、Product HRチームを立ち上げました。

現在ログラスはマルチプロダクト化に着手しており、グローバル進出前に、価値ある挑戦が山積みではあるものの、それを好機と捉えているような状況です。

立ち上げから5年間を振り返って思うのは、「採用ブランディングを活かしきる採用力を強みにしている」のがログラスの特徴になっていることです。

Product HRチームができたことにより、ここ半年間で採用力がかなり上がったなと思っています。

特にtoBスタートアップは“映える強み”を作っても維持が難しいため、プロダクト戦略上の重要事項に対して積極的な投資を行い、自社の強みをつくることが正攻法だと言えます。

私が誇れるコードを持つ強い開発チームを目指したのは、エンジニアが自信を持って「イケてる」と言える環境を作りたかったからであり、これからも組織を成長させられるように尽力していきたいと思います。

Q&Aセッションでは参加者の質問に丁寧に回答

ここから、Q&Aセッションでの内容をお届けします。

Q1: 創業当初の黎明期では採用するためにユニークなポジショニングを作ったのか、それとも純粋にプロダクトのことを考えたらユニークなものができたのでしょうか?

坂本:

最初は技術的に面白いところが何もなく、エンジニアを採用したいからと無理やり面白くしようとしても、事業の邪魔をしてしまう状況でした。なので、開発の技術スタックではなくて、開発の手法や組織のカルチャーに特化させ、DDDの考え方をもとにデータマネジメントをきちんとやっていく方針を定めたのです。

私等のシステムは財務会計や管理会計のソフトウェアですが、それこそ数十年前から先行プレイヤーがいましたし、データモデルが重要なのはかなり前からはっきりわかっていました。

それらを踏まえた上で、21世紀に作り直すのならどうするかという観点で取り組まなければならないのが前提になっていたわけです。そこで、まずは自己流でDDDを実践し始めたのですが、ある程度経ってからDDD界隈で有名だった同僚の松岡を業務委託の外部講師として呼んで、それが結果的に採用につながったんですね。

組織として追究したい強みに対して、力をお借りしたい有名な方を自社に呼びつつ、その人に必死さが伝わったことで採用することができ、ブランディングにもつながった成功事例と言えるでしょう。

どこに特化したいのか。何を重要視するのかを見定めて、それをどのように深掘りしていくかに取り組み続けたのが黎明期でしたね。

Q2:ポジショニングを定義していく上で、どの程度の粒度感で競合を考えると比較がしやすくなるのでしょうか?

野崎:

ポジショニングを決める前に、候補者のインサイトが出ると思うんですが、その人が欲しい企業と行きたい企業という考え方で競合を考えるようにしています。その際、外部発信の取り組み方を参考にするために、基本的には業界や企業名まで出すように意識していますね。

坂本:

私の場合はバイネームで競合をだしています。シリーズA、Bくらいの急成長しているスタートアップで、かつテクノロジーも面白そうという形でターゲティングしていくと、テックブランディング調査の中に入っている企業が競合になってくるんです。

逆にメガベンチャーや大企業がライバルになることはほぼなく、競合がはっきりしているからこそ、そことの差別化は考えやすくなっていると思いますね。


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