2026年9月3日

採用ノウハウ

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用とは?違い・選び方・導入手順を解説

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用は、人材を採用・配置・評価する際の考え方が大きく異なります。ただし、どちらか一方がすべての企業に適しているわけではありません。事業戦略や必要な人材、組織の状況に合わせて選ぶことが重要です。

この記事では、両者の違いを採用、仕事内容、給与、評価など9項目で比較します。
企業と従業員それぞれのメリット・デメリットから、自社にはどちらが向いているのかまで解説していきます。

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ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いは、どちらが優れているということではなく、仕事と人のどちらを起点にして両者を結びつけるか、という考え方の違いです。

ここでは、それぞれの基本的な考え方を確認したうえで、人事制度や実際の運用にどのような違いが生まれるのかを比較します。

ジョブ型雇用とは「仕事に人をつける」雇用制度

ジョブ型雇用とは、企業が必要とする職務をあらかじめ決めておき、その職務を担える人を採用する制度のことです。

職務の内容や必要なスキル、勤務地、報酬などは職務記述書(ジョブディスクリプション)にまとめられ、採用も評価も報酬もこの文書を基準に決まります。欧米では一般的な雇用のかたちです。

求める人材像がはっきりしているので、必要なスキルを持つ人を狙って採用できます。担当者が異動や退職でいなくなっても職務そのものは残るため、同じ要件で次の人を探せるのが強みです。

日本でも一部の大手企業が導入を進めてきました。

ジョブ型雇用を導入した20社

富士通/日立製作所/アフラック生命保険/パナソニック コネクト/レゾナック・ホールディングス/ソニーグループ/オムロン/中外製薬/KDDI/三菱マテリアル/資生堂/リコー/テルモ/オリンパス/ENEOS/ライオン/三井化学/三菱UFJ信託銀行/東洋合成工業/メルカリ

出典:内閣官房・経済産業省・厚生労働省「ジョブ型人事指針

メンバーシップ型雇用とは「人に仕事をつける」雇用制度

メンバーシップ型雇用とは、職務を限定せずに人を採用し、入社後に仕事を割り当てていく制度のことです。日本の多くの企業が長く採ってきたやり方で、新卒一括採用・終身雇用・年功序列の3つがセットで機能してきました。

採用の段階では配属先が決まっていないことも珍しくありません。入社後は数年ごとの異動でさまざまな部署を経験し、自社のことを幅広く理解した人材が育っていきます。事業の変化に合わせて人を動かせるので、雇用を守りながら組織を組み替えられるのが強みです。

採用・仕事内容・給与・評価など9項目で比較

両者の違いを整理すると、次のようになります。ただし、実際の制度は企業によって異なり、すべての特徴がそのまま当てはまるわけではありません。

項目

ジョブ型雇用

メンバーシップ型雇用

採用の考え方

職務に必要な人を採る

自社に合いそうな人を採る

採用のタイミング

欠員や新設ポジションが出たとき

新卒一括採用が中心

仕事の範囲

職務記述書で明示する

会社の指示で決まる

異動・配置転換

原則なし(本人の同意が前提)

会社主導で実施する

勤務地

契約で限定されることが多い

転勤を含めて会社が決める

給与の決まり方

職務給(仕事の価値で決まる)

職能給(能力と勤続で決まる)

評価の基準

職務の遂行度と成果

能力・行動・勤続年数

人材育成

本人の自己研鑽が中心

会社の研修と異動で育てる

昇進・昇格

上位ポジションの空きが前提

年次と評価の積み上げ

ジョブ型雇用でもチームへの貢献や行動を評価することはあり、メンバーシップ型雇用でも専門職を設けることは可能です。重要なのは呼び方ではなく、役割、採用基準、評価、報酬、育成が一貫しているかです。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用のメリット・デメリット

雇用制度を検討するときは、企業側だけでなく、働く人にどのような影響があるかも確認する必要があります。企業にとって採用しやすい仕組みでも、従業員がキャリアの見通しを持てなければ定着にはつながりません。

ここでは、それぞれのメリットとデメリットを企業・従業員の両方の視点から整理します。

ジョブ型雇用のメリット・デメリット

ジョブ型雇用は、職務や求める成果、必要なスキルが明確なため、専門人材の採用や適正な評価につなげやすい仕組みです。一方、職務を細かく定める分、運用負担が増え、柔軟な配置や協力が難しくなることもあります。

企業

従業員

メリット

人材要件が明確で、ミスマッチを防ぎやすい

役割が明確で、専門性を活かしやすい

デメリット

運用負担が大きく、柔軟な配置が難しい

継続的な学習が必要になる

メンバーシップ型雇用のメリット・デメリット

メンバーシップ型雇用は、入社後の配置転換や育成を通じて、長期的に人材を育てる仕組みです。柔軟に人材を配置できる一方、職務や評価基準が曖昧になりやすい側面があります。 

企業

従業員

メリット

柔軟な配置と長期的な育成がしやすい

幅広い経験を積みやすい

デメリット

職務や評価基準が曖昧になりやすい

異動やキャリアを選びにくい

ジョブ型雇用の導入が進まない3つの理由

ジョブ型雇用への関心は高まっていますが、JACリクルートメントの調査(2025年)では、導入済みの企業は21.8%です。従業員1,000人以上では36.0%まで上昇しているものの、全体ではまだ約2割にとどまります。

経団連の調査によると、導入した理由・導入していない理由は以下の通りです。

出典:日本経済団体連合会「2025年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果

ジョブ型雇用を導入するには、職務を定義するだけでなく、採用・評価・報酬・育成の仕組みも見直す必要があります。

ここでは、企業が導入を進めるうえで壁になりやすい3つの理由を解説します。

職務の定義と更新に手間がかかる

ジョブ型雇用では、職務ごとに仕事内容、責任、必要なスキル、期待する成果を定めます。しかし、複数の業務を兼任する職種や、状況に応じて役割が変わる組織では、職務を明確に切り分けるのが困難です。

一度作成して終わりではなく、事業や業務の変化に合わせて職務記述書を更新する体制も必要になります。

評価・報酬・育成も見直す必要がある

職務を定義しても、従来の評価や報酬制度がそのままでは、ジョブ型雇用は機能しません。職務の価値や成果を処遇へ反映し、必要なスキルを身につけるための育成機会も整える必要があります。

配置転換を通じて人材を育ててきた企業では、専門人材や将来の管理職をどのように育成するかも課題になります。

経営戦略から必要な人材を具体化できていない

制度設計の前提となるのが、「今後どの事業に注力し、そのためにどのような人材が必要か」という人材戦略です。この部分が曖昧なままでは、職務や人材要件を定めても、経営戦略と結びつかない制度になってしまいます。

トラックレコードがTOPIX100企業を調査したところ、90%が人材戦略の方針を示していた一方、48%では人材ポートフォリオの具体的な記載を確認できませんでした。方針から必要な人材、採用・配置まで具体化することに、多くの企業が課題を抱えています。

人材戦略を、具体的な人材要件や採用施策へつなげるには? 

自社にはどちらの雇用スタイルが合う?

自社に合う制度は、業種や規模だけでは決まりません。事業戦略、採用したい人材、仕事の変化の速さ、現在の評価・給与制度、組織文化を踏まえて判断する必要があります。全社を一度に変えるのではなく、特定の職種や階層から始める選択肢もあります。

ここでは、それぞれが向いている企業の特徴と、両者を組み合わせる方法を紹介します。

ジョブ型雇用が向いている企業

ジョブ型雇用は、次のような企業や組織で取り入れやすいと考えられます。

  • IT、研究開発、データ、法務など専門職の採用を強化したい

  • 事業ごとに必要なポジションや人材要件が明確である

  • 年齢や勤続年数より、役割の大きさを処遇へ反映したい

  • 海外拠点を含め、等級や役割の共通化を進めたい

  • 社内公募などを通じて、従業員のキャリア自律を促したい

一方、仕事内容が頻繁に変わり、個人ごとの役割を切り分けにくい組織では、細かな職務定義が実態に合わなくなる場合があります。導入前に、職務記述書を誰が更新し、現場の評価をどう支援するかまで決めておく必要があります。

メンバーシップ型雇用が向いている企業

メンバーシップ型雇用は、次のような企業に向いています。

  • 新卒社員を採用し、時間をかけて育成したい

  • 部門を越えた異動を通じて、将来の管理職を育てたい

  • 市場や顧客の変化に応じて、担当業務を柔軟に変える必要がある

  • 個人の担当範囲を越えて協力する文化を重視している

  • 特定の職務より、組織への適応力や長期的な成長可能性を重視する

ただし、従来の仕組みを維持する場合も、役割や評価基準を曖昧なままにしてよいわけではありません。従業員が納得して働けるよう、現在の役割、期待する行動、キャリアの選択肢をできる限り明確にすることが重要です。

両方のよさを取り入れる方法もある

実際には、ジョブ型かメンバーシップ型かを二者択一で決める必要はありません。たとえば、新卒や若手は配置転換を通じて育成し、管理職や専門職には役割等級・職務給を適用する方法があります。IT部門や新規事業部門からジョブ型を導入し、運用結果を見て対象を広げることも可能です。

導入は、次の5ステップで進めます。

  1. 目的を決める
    専門人材の採用、適所適材、処遇の見直しなど、解決したい課題を明確にする

  2. 対象を決める
    全社員ではなく、職種・部門・等級ごとに適用範囲を検討する

  3. 役割と人材要件を定める
    職務内容、責任、必要な能力・経験、期待成果を整理する

  4. 人事制度を連動させる
    採用、等級、評価、給与、育成、配置の仕組みを一貫させる

  5. 試行して見直す
    一部組織で運用し、管理職と従業員の意見をもとに更新する

給与体系の変更によって従業員に不利益が生じる可能性がある場合は、労働条件の変更に関する法的な検討など慎重に合意形成を行う必要があります。人事だけで制度を完成させず、経営、現場管理職、従業員と目的を共有しながら進めることが重要です。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用に関するよくある質問

最後に、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用について、企業の人事担当者が疑問を持ちやすい点に回答します。

ジョブ型雇用と成果主義は何が違いますか?

ジョブ型雇用は、職務や役割を明確にし、それに合う人材を採用・配置する人材マネジメントの考え方です。成果主義は、仕事の成果を評価や報酬へ反映する考え方を指します。

ジョブ型雇用でも、成果だけでなく役割の遂行度、行動、チームへの貢献などを評価できます。反対に、メンバーシップ型雇用の企業が成果主義を取り入れることも可能です。両者は同じ意味ではありません。

ジョブ型雇用になると異動や配置転換はなくなる?

異動や配置転換が完全になくなるわけではありません。ただし、職務や勤務地を限定して雇用している場合は、契約内容や本人の同意を踏まえた対応が必要になります。

実際のジョブ型人事では、空いているポジションを社内に公開し、従業員が応募する仕組みもあります。会社都合の一方的な配置だけでなく、事業上の必要性と本人のキャリア希望をすり合わせる運用が重視されます。

中小企業でもジョブ型雇用を取り入れられる?

中小企業でも導入できます。すべての職務について詳細な職務記述書を作るのではなく、まずは採用が難しい専門職や管理職など、必要性の高いポジションから始める方法が現実的です。

厚生労働省も、企業規模を問わず参照できる職務給の手引きやモデル賃金制度を公開しています。大がかりな制度改定を先行させるのではなく、役割・必要能力・評価基準を整理し、小さく試しながら自社に合う形へ調整するとよいでしょう。

自社に合った雇用スタイルを選び、採用と組織づくりに活かそう

ジョブ型雇用は仕事を起点に人材を採用・配置し、メンバーシップ型雇用は人を起点に仕事を割り当てる仕組みです。専門人材の採用や役割に応じた処遇にはジョブ型が、長期育成や柔軟な配置にはメンバーシップ型が向いています。

どちらを選ぶにせよ出発点は同じで、自社の仕事を職務として言葉にできているかどうかが、制度の設計も採用の成否も左右します。

トラックレコードは、採用戦略の設計から採用ブランディング、スカウトなどの実務まで一気通貫で支援しています。本文で紹介した「人的資本開示調査 2026」では、TOPIX100企業の開示を10項目で分析し、経営・事業戦略から必要な人材を整理するための視点を紹介しています。

まずは解決したい課題と必要な人材を整理し、適用する職種や階層を絞るところから始めてみてください。

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