2024年11月27日

イベントレポート

テック人材向け採用ブランディングを短期間で成功させるために意識した3つのコト|戦略採用勉強会・開催レポ#3

リファラル、スカウト、エージェントなど、あらゆる手段を駆使してもハイクラスなテック人材を採用するのは、非常に難易度が高いと言われています。

トラックレコードでは、「戦略採用勉強会」と称して、テック人材の採用で成功している企業様、勢いのある企業様をお招きした勉強会を開催しています。

今回は、株式会社ゆめみ 代表取締役・片岡 俊行氏、株式会社GENDA VPoE兼プロダクト開発部部長・荒井 勇輔氏をお招きしたイベントについて、お届けします。

#3は弊社の代表取締役・野崎によるプレゼンテーションと、Q&Aセッションをまとめました。

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短期間でテック人材向けに存在感を示した、イオンの採用ブランディング

▼スピーカー
株式会社トラックレコード 代表取締役
野崎 耕司

トラックレコードは、ハイクラスデジタル人材採用のための戦略設計からクリエイティブ、スカウティングまでを一気通貫で支援する事業を行っています。

本日は当社も支援をしているイオン株式会社(以下、イオン)の採用ブランディングの事例から、テック人材向けのブランディングによって、短期間で存在感を高め、自己応募やリファラルによる採用決定が生まれたプロセスと内容をご紹介します。

まず、短期間でテック人材向けに存在感を示せた理由は大きく以下の3つが挙げられると思っています。

  1. エンジニア向けのギャップを最大化

  2. エンジニアメンバーによる連続的な発信

  3. 改善のPDCAサイクルを実践する「スクラム広報」

まず、当時の課題感からお伝えします。

イオンは積極的に技術的なチャレンジに取り組んでいましたが、エンジニア向けの情報発信が十分にできなかったので、エンジニア界隈からは「規模は大きいけど、古くてレガシーな会社」という印象を持たれていたのです。

そのため、まずはエンジニア向けのギャップを最大化できる採用ポジションを定め、さらにそのギャップを伝える連続的な発信活動に取り組みました。

最初に行ったのは、ギャップの部分である「大きくて新しい」を伝えるための素材収集でした。イオングループ3社のCTOや開発部長へのヒアリング調査、外部公開や内部ドキュメントなどの資料を分析し、そこから得られた強みを整理していきました。

その中から、「5つの差別化材料」を見つけることができたのです。

イオンは国内最大の小売企業として“生活インフラ”になっている一方、IT組織としては発展途上だからこそ、組織が変化していく余地が多数残っていました。

また、経営陣もテクノロジーへの期待が高く、イオンのDX化を応援する風土も整っていました。そのほか、Google出身者やCTO経験者など、経験豊富なリーダー人材が集まっており、クラウドへのシフトなど、変革がすでに始まっていたのも差別化ポイントになると思っていました。

その後、エンジニア向けのギャップを強く発信する採用スライド資料を作成しました。

採用スライド資料を作った上で、そこに記載している素材をテックブログやイベント、PRなどで発信していき、活動全体を一つの採用サイトにまとめていくことを行いました。

エンジニア向けの採用スライド資料の制作では「ビジュアル」と「コピー」にこだわり、ギャップの最大化を意識しました。よくある会社紹介のスライドと同じ構成ではなく、“口説く”ことを心がけたプレゼンテーション形式の資料にしています。

例えば冒頭のスライドでは、「他では得られない経験と経歴」というコピーを明示し、それらを一つひとつ分解しながら説明していく構成になっています。言葉遣いに関しても、エンジニアフレンドリーを意識し、具体的な事実やこだわりも丁寧に細かく記載したのです。

イオンの経営戦略として、直近3年で3,000億円を超えるデジタル投資を行っていることも伝えつつ、イオングループ本体の取締役の方にも出ていただき、「イオンは本気でデジタルシフトに取り組んでいる」ことをメッセージで発信しています。

ただ、採用スライド資料だけでは大きなモメンタムは作りにくいので、Zennによるテックブログの運用やエンジニア向けカンファレンスやイベント登壇、主催など、連続的な発信活動も並行しました。

このように密度を濃くして、集中的に発信していくことで存在感を高めることができたと考えています。

採用ブランディング活動における数値の設計と会議体の運用

採用ブランディング全体の目標については、下記のように設計しています。

発信活動をやりきれる体制を構築し、発信量を最大化させていき、現在はイベント参加者数や記事のPV数といったリーチ量の最大化に主眼を置いており、タレントプールの蓄積や採用への貢献などに着手している状況となっています。

採用ブランディング活動においては、行動量・リーチ量・コンバージョンの数値を取得するといいでしょう。

あわせて、活動の振り返りのための会議運用についても、今は3つの会議体を定期運用しています。週次でDevRelの定例会を開いているほか、月1でイオングループ各社のCTOを招いての企画会議やイオン本体のCTOとの振り返り会を実施しています。

それぞれの会議の場で施策単位の振り返りを行い、PDCAサイクルを回していくことを意識しながら取り組んでいます。

イオンのオウンドメディアは「AEON TECH HUB」という名称ですが、イオングループはもちろん外部のパートナーやエンジニアなど、内外のハブとしてさらなる発展を見据えています。

グループ各社CTOが登壇するイベントや、技術コミュニティでの登壇だけではなく、外部の技術パートナーとの共同イベントを開催することで、イオン単体では実現できない発信が可能になり、DevRel活動にレバレッジをかけることができます。

まとめ

LTの内容をまとめると、イオンという歴史のある巨大な会社に持たれていた印象に対して、各社のモダンな取り組みとコミュニケーションによるギャップの最大化を目指しました。

発信活動は、ブログ執筆やイベント登壇などに加えて企画シーンにおいても“全員広報”を意識し、連続的な発信を行いました。

そして、小さい改善と大きな変化を生み出す改善の会議設計を仕組み化することで、アウトプットに対して適切な振り返りを実施し、スピーディーに改善できる体制を作りました。

Q&Aセッションでは「1人目の採用はどうやって?」「どのスカウト媒体つかっている?」「リファラル経由の方をお見送りする時は?」など具体的な話題も

各社の登壇の後は、Q&Aセッションとして登壇では語りきれなかった具体的な話題にも切り込んでいきます。

Q:採用基準を下げずにスコープコントロールをするというのは、複数ある基準から絞るという考え方なのでしょうか?

片岡:

スコープコントロールをしていく上で、例えばデザインとエンジニアリングの重なる部分に着目したり、テックリードの担う役割を広げてみたりと、幅を持たせて考えることで新しい発想や打ち出し方が生まれるようになります。

例えば、「プロダクティビティエンジニア」というかなり狭めた打ち出しをすることで、「そこまでプロダクティビティにこだわっているのか!」という暗黙の魅力づけにもつながります。「プロダクティビティエンジニアになりたい、でもそういう職種がない」と困っている人にも、「うちにはあるよ」と見せることができます。

サイボウズさんも新卒採用に「生産性向上エンジニア」という職種があるのですが、このような見せ方をすることで会社全体の技術広報にもつながります。

このように、スコープコントロールは色々と工夫の余地があるわけです。

野崎:

基本的に採用要件は下げないのに対して、相手が好きなものや得意なものにピン留めしたものを合わせていくのがスコープコントロールで、ピン留めの仕方が際立っているほど、採用ブランディングにもなりますよね。

Q:GENDAの荒井さんにお聞きしたいのですが、1人目のエンジニアはどのように採用されたのでしょうか?

荒井:

私自身もGENDAの前CTOからのリファラル経由で入社したのですが、実際にリファラル採用をやると決めてからは、自分が過去に知り合った優秀な方々の中から組織をリードしていくことを担ってくれそうな方に声をかけていきました。

Q:直接応募の実態についてお伺いしたいのですが、直近1年間くらいを振り返ったときに自己応募・リファラル・アルムナイ・スカウト・エージェントではどのような比率になっていますか?

片岡:

テックリードを採用しようとすると、例えばLAPRASでの評価が4.0以上になるようなエンジニア界隈での有名人はエージェントに出てこないですし、リファラルでもなかなか難しいと感じています。

なので、企業側から定期的にアプローチしていくしかないと思いますね。私がLTでお伝えしたサーバーサイドのテックリードの方は、SNSを活用して転職をしたこともあり、界隈ではかなり有名になっていました。当初はお見送りになっていたんですが、私から定期的に「その後どうですか?」というコンタクトを送っていたところ、「1年ほど短期で転職を考えている」という話を本人から聞いたのです。

そこからカジュアル面談を行い、入社に至ったわけですが、これはナーチャリングに近い形での採用になっていますね。おそらくテックリードのハイクラス層の採用は、そのようなやり方にシフトしているのではないでしょうか。

もちろん、転職ドラフトやFindyといったスカウト媒体に登録しているテックリードもいますが、スカウト経由での採用はどんどん難しくなっているなと感じています。

荒井:

直近1年間では自己応募が非常に少なく、リファラルとスカウトの割合はちょうど50%ずつになっています。リードエンジニア以上については、採用要件を高く設定していることからリファラルが多いです。

野崎:

ちなみにGENDAでは、当時の“Twitter転職”といったSNSなどオープンな場での採用活動はされていますか?

荒井:

“Twitter転職”はやっていませんが、YOUTRUSTでの採用は行っていますね。リファラル採用以外でも、転職ドラフトやFindyでもリードエンジニア候補が見つかれば、積極的にアプローチするようにしています。

Q:リファラルに限らず、どのチャネルも対象者の枯渇問題に直面しますが、常時運用しているスカウト媒体はいくつくらいあるのでしょうか?

片岡:

弊社はクライアントワークの会社なので、一般的なスタートアップ界隈で転職する層のクラスターに候補者がいないのですがスカウト媒体は転職ドラフト、Findy、LAPRASの3つで、年間で10名程度採用しています。

今の時代、1つの媒体で何十人も採用できるわけでもないので、地道なスカウト活動を継続するのが一番大事だと思っています。

荒井:

片岡さんと同様のスカウト媒体で、2023年の実績ではスカウト経由で6名の採用につながっています。

Q:リファラルを行うハードルとして、社員と関係性がある以上、見送りしづらいのではと思うのですが、この辺りはどのように対応していますか?

荒井:

書類選考や面接など、紹介者が選考プロセスに登場しないように設計しています。弊社の状況で言うと、リファラルであっても採用基準をもとに判断していて、お見送りするケースもあります。

野崎:

お見送りする際に、紹介者に対してのコミュニケーションや候補者への断りの入れ方などはどのように工夫されていますか?

荒井:

紹介してくれた人に対しては、事前にどういう人なのかをヒアリングするようにしています。あとは業務委託でまずは我々のことを知ってもらおうというアプローチも行っていますね。

どんなに能力が優秀な人でも、会社にマッチしないことは十分にあり得るので、そこは丁寧にお見送り理由を説明するしかないと思います。それでも例えば、バックエンドとフロントエンドができる人が、バックエンドはNGでもフロントエンドでお願いしたいポジションがあれば、そちらを打診させていただくことはあります。

片岡:

私の場合、リファラルでお見送りするときは、紹介者に「見送りになるのでごめんね」と一報を入れてから候補者に連絡していますね。弊社も採用基準に基づいて判断しているので、リファラルであってもお見送りすることはよくあります。

ただ、界隈の有名な人だと社内でも何人か繋がっているので、社内の人に「実際(ゆめみの実態って)どうなんですか?」と候補者から聞いてもらうことで、うまくいくケースもあります。

特にハイクラスの人材だと、どこに行こうか色々と悩むことが多く、繋がりのある社内のエンジニアの話を聞いて意欲が高まり、転職に繋がったのが先ほどのサーバーサイドのテックリードの方でした。

野崎:

ありがとうございます。ちなみにリファラルのおける時間投資の価値観や考え方、ルールがあれば教えていただけますか。

荒井:

体制に関しては、リファラルや採用、内部統制を強化していくためにHRBPという組織を作り、そこのメンバーが中心となって進めています。採用における時間の使い方は、例えばリードエンジニアの採用であれば、週の中でこの時間はスカウトに注力するなど、明確に時間を取ってメンバー全員でスカウトを送るようにしています。

野崎:

アクションに対しての評価の仕方はどうしていますか。

荒井:

私の部署では、メンバー共通の目標として「採用を追い続けることが競争優位性を生み出す」というのを掲げています。

片岡:

採用総単価を算出して一人当たりの採用コストの目安を見るようにしているのと、売上高採用比率という指標は2%を切るというのを提示していますね。

あとは事業部門における採用・育成稼働比率の上限を稼働の2%〜3%に定めています。採用と育成は相互依存の関係があるので、例えば100人いれば、2~3人月分の稼働で毎月採用と育成活動に費やすようにしています。

他方で、社員の60%が採用に関わるという採用関与比率を作っており、100人いれば60人が2~3人月分の稼働をするような分業体制を敷いています。

野崎:

採用・育成稼働比率2-3%と採用関与比率60%の数字は、何を根拠にして決めたのでしょうか?

片岡:

2%は限界まで低く設定しているという感じです。

例えば10人の会社だと、だいたい2人くらいが頑張って採用にコミットしてくれるイメージがあると思うんですね。ただ、100人規模になったときに20%はありえませんし、一方で1人しか頑張っていないというのも多分ないと思うんです。規模感が大きくなると数%くらいだろうという過去の経験則に基づいて2-3%と定めました。

イノベーター理論によると60%の関与率になると、過半数を超えた関与率になり、同調圧力が働きやすくなり、結果として採用はやらざるを得ないものとして安定して全社的に採用業務を分担できる状況ができています。逆に言えば、それ以上に浸透させるには困難な状況なので無理に広げることはしていないです。

野崎:

最後におふたりからメッセージをお願いします!

片岡:

今回は採用広報や採用マーケティングのお話をさせていただきましたが、これらを実践するには、メンバーの協力が欠かせません。私が大切にしているのは、「いかに採用業務を楽しめるか」ということです。ぜひ皆さん、楽しんで採用活動に取り組んでいきましょう。

荒井:

タスクを消化していく感覚で取り組むだけでは、なかなかうまくいかないと思っています。「自分の行動が周りに良い影響を与え、組織全体の成長につながり、結果自分自身にもプラスになる」という意識を持って取り組むことで、自然と良い結果が生まれるでしょう。


トラックレコードでは、ハイクラステック人材の採用に必要な戦略から手法までを、事例を交えながらお伝えしていく勉強会を開催しています。採用支援に関してのご相談も随時受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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