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「AIを採用に使う企業が増えている」と聞いても、実際には何から取り入れるべきか分からなかったり、便利そうな一方で、自社の採用課題にどれが合うのか、導入してうまくいくのかが見えづらいと考える人事担当者の方も多いのではないでしょうか。特に新卒採用は、効率化だけでは割り切れない難しさがあります。
この記事では、新卒採用におけるAI活用のメリット・デメリットや事例、導入時のポイントと、AI時代にこそ求められる人事の役割を整理していきます。読み終えるころには、自社ならどこにAIを活かせそうか、具体的に考えやすくなるはずです。


新卒採用でAIが話題になる理由は、単なるトレンドではなく、採用現場が抱える構造的な課題が背景にあります。
ここでは、AI活用が広がっている理由を「採用市場の変化」と「AI技術の進化」の2つの視点から整理します。

引用:マイナビの「2026年卒企業新卒内定状況調査」
マイナビの「2026年卒企業新卒内定状況調査」によると、2026年卒の採用充足率は69.7%で、4年連続の減少かつ同時期の調査では過去最低を記録しました。つまり、約3社に1社は必要な人数を採り切れていない計算になります。
同社の「2026年卒 企業新卒採用活動調査」では、約7割の企業で「母集団(エントリー数)の不足」が採用課題として挙げられており、「マンパワー不足」も増加傾向にあります。限られた人員で多くの候補者に対応しなければならない採用現場において、書類選考の自動化や日程調整のAI活用への関心が高まっているのは、こうした現実的な背景があるためです。

企業側の生成AI活用も急速に進んでいます。コーレ株式会社の「2025年最新・企業の生成AIの利用実態に関する調査」によると、約6割の企業が生成AIを利用と回答しました。「人事・労務」では26.0%と、すでに4社に1社以上の人事部門で導入が進んでいます(調査期間:2024年12月)。
また、従来のATS(採用管理システム)にAI機能が搭載されるケースも増えており、「特別なツールを新たに導入しなくても、既存システムの中でAIを活用できる」環境が整いつつあります。

一方で学生側も、AI利用経験のある学生は82.7%にのぼり、2024年卒の39.2%から2年で2倍以上に増加しました。利用目的1位は「エントリーシートの推敲(68.8%)」 と、もはやAI活用は当たり前の前提となっています。
引用:マイナビ「2026年卒 大学生キャリア意向調査4月<就職活動におけるAI利用について>」

新卒採用でAIが活用されている場面は、特定の工程に限りません。母集団形成から選考、内定後のフォローまで、採用プロセスの各段階で導入が進んでいます。代表的な活用シーンを以下にまとめました。
活用シーン | 概要 | 主な効果 |
|---|---|---|
ESスクリーニング・要約 | 評価基準に沿ってAIがESをスコアリング・要約し、人による精読の前段階を担う | 初期選考の時間短縮 |
AI面接(録画面接の自動評価) | 録画動画をAIが分析し、回答内容や話し方をスコアリング。対面面接との併用が前提 | 選考スピード向上・日程調整の削減 |
ATS連携(採用管理システム+AI) | ATSにAI機能を搭載し、候補者の自動振り分けや歩留まり予測分析などを行う | 選考管理の自動化・データ活用 |
チャットボットによる候補者対応 | 説明会案内やよくある質問への対応をAIが24時間自動で行う | CX(候補者体験)向上・問い合わせ工数の削減 |
求人票・スカウト文面の作成支援 | 生成AIがターゲットに合わせた文面を下書きし、人が確認・調整する | 文面作成の効率化 |
AIの活用シーンは「選考の自動化」だけにとどまらず、候補者との接点づくりや業務の下支えにまで広がっています。重要なのは、すべてをAIに置き換えることではなく、自社の採用フローのどこにAIを組み込めば効果が高いかを見極めることです。

新卒採用でAIを使うメリットは、単に作業が早くなることだけではありません。人手ではばらつきやすい業務を整えたり、学生対応の質を保ちやすくなったりする点も大きな価値です。
ここでは、新卒採用におけるAI活用の主なメリットを解説します。
AIを導入する最大のメリットは、やはり業務の効率化です。
たとえば、数千件のESを人の目だけで読み込めば数日〜数週間かかることもあります。AIによる一次スクリーニングを挟むことで、この工程を大幅に短縮でき、空いた時間を面接や候補者との対話といった「人にしかできない業務」に回せるようになります。採用担当者の人数が限られるチームほど、この恩恵は大きいはずです。
人による評価には、どうしても主観やコンディションによるばらつきが生じます。面接官ごとに基準の解釈が異なったり、一日の後半になるほど評価が甘くなったりすることは、現場では珍しくありません。
AIであれば、あらかじめ設定した基準で一貫したスコアリングができるため、評価のブレを抑えやすくなります。構造化面接の設計と組み合わせれば、公平性をより高めることが可能です。
メリットは企業側の効率化だけではありません。チャットボットによる即時対応や選考状況の自動通知があれば、「連絡が遅い」「今どの段階かわからない」といった候補者の不満を減らせます。
また、過去の採用データをAIで分析し、「入社後に活躍する人材の傾向」を選考基準に反映させることで、ミスマッチの防止にもつながります。採用のゴールは内定を出すことではなく、入社後の定着・活躍にあるので、この点は長期的に見ても大きなメリットです。

メリットがある一方で、AIの導入には気をつけるべきポイントもあります。
ここでは、導入前に押さえておきたいデメリットと注意点を2つの視点から整理します。
AIは大量のデータを効率よく処理するのは得意ですが、候補者の「熱意」や「人柄」といった定性的な要素を正確に読み取るのは苦手です。たとえば、ESの文面が整っていなくてもポテンシャルの高い学生はいますし、AI面接では緊張で本来の力を発揮できないケースもあります。
AIのスコアだけで機械的にふるいにかけてしまうと、本来出会えたはずの人材を取りこぼすリスクがあります。AIはあくまで「判断材料を整理する役割」と位置づけ、最終的な見極めは人が行う設計にしておくことが重要です。
AIの評価モデルは、学習データに偏りがあれば、その偏りをそのまま再現してしまいます。たとえば、過去の採用実績データに性別や大学名による偏りが含まれていた場合、AIがそのバイアスを引き継いでしまう可能性があります。
また、候補者から「なぜ不合格になったのか」と問われたとき、「AIが判断しました」だけでは候補者の納得は得られません。AIを活用する場合でも、評価プロセスの透明性を確保し、結果について人が説明できる体制を整えておくことが大切です。

ここでは、新卒採用にAIを導入した代表的な企業事例を2社紹介します。
いずれも「AIだけで完結させない」設計がポイントになっています。
キリンホールディングスは、より多くの候補者のポテンシャルを見極める機会をつくるため、VARIETAS社が提供する対話型の「AI面接官」を新卒採用に導入しました。ESの内容をもとにAIが候補者と直接対話し、社会人基礎力などを多角的にスコアリングする仕組みです。
運用開始後、選考対象者数20%増加、初期選考時間97%削減を見込んでいます。 書類だけでは見えなかった候補者の強みを早い段階で把握できるようになり、人事担当者はより深い対面選考に時間を充てられる体制づくりが進んでいます。
参照:PR TIMES「キリンホールディングス、AI面接官を本格導入決定」
横浜銀行は2019年度の新卒採用から、FRONTEOが開発したAIエンジン「KIBIT」をES選考に導入しました。数千件のESを複数の担当者が読み込む従来の選考では、限られた時間の中ですべてを詳細に読み込むことが難しく、担当者間で評価にばらつきが出やすいという声もありました。
AIが応募者の志望動機などを分析しスコア化することで、選考時間を約70%削減。 書類選考の最終判断では担当者が必ずESに目を通す運用とし、AIの評価はあくまで判断材料の一つとして位置づけています。さらに2025年には、対話型の「AI面接官」をインターンシップの参加者選定に試験導入し、採用手法の高度化にも取り組んでいます。
参照:株式会社横浜銀行「新卒採用エントリーシート選考にAIを導入」

事例からもわかるように、AI導入の効果は「どう設計し、どう運用するか」に大きく左右されます。
ここでは、導入を検討する際に押さえておきたい3つのポイントを整理します。
AI導入で最も避けたいのは、「とりあえず入れてみる」というアプローチです。まずは自社の採用プロセスを振り返り、どの工程にどれくらいの工数がかかっているのか、どこにボトルネックがあるのかを整理することが出発点になります。
たとえば「ESの読み込みに時間がかかりすぎて、面接準備に手が回らない」という課題があるなら、ESスクリーニングへのAI導入が有効です。課題が曖昧なままツールを選んでしまうと、導入したものの現場で使われないという事態にもなりかねません。
AI活用の例
こんな課題があるなら… | 検討したいAI活用 |
|---|---|
ESの読み込みに時間がかかり、面接準備に手が回らない | ESスクリーニング・要約AIの導入 |
面接官の日程調整が追いつかず、選考スピードが遅い | AI面接(録画型)の導入 |
説明会や選考に関する問い合わせ対応に追われている | AIチャットボットの導入 |
選考データが散在し、歩留まりの原因がわからない | AI機能付きATSの導入 |
AIに評価を任せるには、前提として「何を基準に評価するのか」が言語化されている必要があります。評価基準があいまいなままAIを導入しても、精度の高い判定は期待できません。
そのうえで、「AIがスコアリングし、人が最終判断する」「AI面接は一次選考まで、二次以降は対面で行う」など、AIと人の役割分担を事前に設計しておくことが重要です。
AIは導入して終わりではなく、運用しながら継続的に見直すことが欠かせません。学習データに偏りがあればAIの判定にもバイアスが生じるため、定期的にデータや評価結果を検証し、必要に応じて基準を調整するプロセスを設けておきましょう。
また、選考結果に対して候補者から説明を求められる場面は十分に想定されます。そのとき、評価の根拠やプロセスを人の言葉で伝えられる体制があるかどうかは、企業の信頼性に直結します。
AIをブラックボックスにせず、「なぜこの判定になったのか」を社内で把握・共有できる運用ルールを整えておくことが大切です。

AIの導入が進むなかで、「人事の仕事はAIに置き換えられるのか」という声を耳にすることがあります。結論から言えば、AIが担えるのは採用プロセスの一部であり、人事の役割がなくなるわけではありません。むしろ、AIの普及によって人事に求められる役割はより本質的なものへとシフトしています。
ここでは、AIが普及したからこそ求められる人事の役割を解説します。
ESのスクリーニングやスコアリング、日程調整といった定型業務はAIが得意とする領域です。一方で、候補者の価値観や志向を深く理解し、自社のカルチャーとの相性を見極めたり、「この会社で働きたい」という動機づけを行ったりするのは、人にしかできない仕事です。
AIが初期選考の工数を減らしてくれる分、人事担当者は面接での対話や候補者との関係構築に、より多くの時間とエネルギーを割けるようになります。
つまり、AIと人事は「代替」ではなく「役割分担」の関係です。AIに任せる部分と人が担う部分を意識的に設計することが、これからの採用チームには求められます。
もう一つ見逃せないのが、学生側のAI活用が当たり前になっているという現実です。ESの作成や自己分析に生成AIを使う学生は年々増えており、従来のように文面の巧さだけで候補者の力量を測ることが難しくなっています。
こうした変化に対応するには、「何を書いたか」だけでなく「なぜそう考えたのか」「その経験から何を学んだのか」を掘り下げる評価設計が重要になります。構造化面接の導入や、AI面接と対面面接の組み合わせによって、表面的な回答の裏にある思考力や主体性を見極める工夫が必要です。
AI時代の人事に求められるのは、AIを使いこなすスキルだけではありません。「自社にとって本当に必要な人材とは何か」を言語化し、AIと人の力を組み合わせて最適な採用体制を設計する力こそが、これからの人事の価値になっていくはずです。

新卒採用へのAI導入を検討するなかで、人事担当者からよく寄せられる疑問をまとめました。
ぜひAI導入前の不安解消にお役立てください。
多くのAI採用ツールでは、応募者のデータを外部の学習データとして利用しない設計になっています。
ただし、仕様はサービスによって異なるため、導入前にデータの取り扱いポリシー、保管場所、第三者提供の有無をベンダーに確認しておくことが重要です。応募者に対してもAI活用の旨とデータの取り扱いを事前に説明しておくと、信頼感の醸成につながります。
AIの判定と従来の評価基準が食い違った場合は、最終的には人が判断するのが基本です。
AIは過去データをもとに傾向を分析するツールであり、万能ではありません。そのため、次のような場面では判断が食い違うことがあります。
自社のカルチャーとの相性を見極める場面
社風とのなじみや価値観の一致といった、言語化しにくい要素は、現時点では人が見たほうが適切に判断できる場合があります。
ポテンシャルを評価する場面
過去データにないタイプの学生や、新しい強みを持つ候補者については、AIが既存の傾向に当てはめて低く評価してしまう可能性があります。
一律にどちらが正しいとは言えないため、「なぜズレが起きたのか」を検証するプロセスを持っておくことが大切です。定期的に評価基準とAIのスコアリングロジックをすり合わせることで、精度を高めていくことができます。
新卒採用でAIを導入する場合、最初のステップとしてはESのスクリーニングやチャットボットによる問い合わせ対応がおすすめです。
工数が大きく定型化しやすい業務から着手することで、導入ハードルが低く効果も実感しやすくなります。小さく始めて成果を検証し、段階的に活用範囲を広げていくのが定着のポイントです。
新卒採用におけるAI活用は、ESスクリーニングやAI面接、ATSとの連携など幅広い領域に広がっています。効率化や公平性の向上といったメリットがある一方で、AIに任せきりにしない運用設計や、バイアスへの配慮も欠かせません。
大切なのは、AIを「導入すること」自体を目的にするのではなく、自社の採用プロセスのどこにAIを組み込めば効果が高いかを見極め、人とAIの役割分担を設計することです。本記事で紹介したポイントや事例が、その第一歩の参考になれば幸いです。
「自社の採用活動で、AIをどこまで活用できているのか気になる」という方は、トラックレコードの「採用×生成AI活用レベル診断」で現状をチェックしてみてください。自社の立ち位置を把握することで、次に取るべきアクションが見えてきます。

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