2024年11月14日

イベントレポート

プラスの効果を最大化する“ストック型”採用ブランディングのススメ|イベント登壇レポ

エンジニア市場の人材獲得競争が激化する中で、採用ブランディングへの関心が高まっています。

TECH PLAY主催の「エンジニア採用を考える会議#06」に当社 代表取締役・野崎が登壇し、TECH PLAY Branding 事業責任者・武藤 竜耶さんとともに「事例から学ぶ すべての採用活動にプラスの効果をもたらす採用ブランディング」というテーマで語りました。

多くの企業の採用活動を支援してきた野崎が提案するのは、プラスの効果を最大化する“ストック型”採用ブランディング

まだ取り組み始めたばかりの企業や、何から手をつけていいかわからない企業の道しるべとなる採用ブランディングの手法を、実際の事例を交えて紹介しました。

企業の“おもしろい”を届けることで機会損失をなくす

トラックレコードは企業の「おもしろい」を届ける会社

トラックレコードは、ハイレイヤーのデジタル人材採用支援として、戦略を作る上流部分と、ポジションやメッセージを訴求するクリエイティブの部分、直接声をかけるスカウティングを一気通貫でやっています。今回事例としてご紹介するイオン様では、エンジニアやデジタル人材のブランディングのご支援をしています。

僕が大事にしているのは、「企業の“おもしろい”を届ける」ことによって、いろいろな機会損失をなくしていくことです。

今回は、ブランディングによる採用へのプラス影響と、実際にプラス影響が生まれた事例、そしてプラスの影響を最大化していくためにストックすることが重要だということをお伝えできたらと思います。

採用ブランディングがもたらすプラスの効果

まずは、採用ブランディングにおけるマイナスとプラスが何なのかということを確認していきたいと思います。認知してもらう、興味を持ってもらう、選考、内定、内定承諾という採用ファネルにそれぞれKPIがあります。

ブランディングがうまくなされてないと、「聞いたことがない」「聞いたことはあるけれど、何をやっているかわからない」「あまり魅力的に感じない」「調べても情報が少なくてよくわからない」「憧れない」というマイナスが生まれます。

それに対してプラスは、「最近よく見かける」「○○社といえば○○をやっている会社」「おもしろそう」「知れば知るほど興味がわく」「この会社のメンバーになれるのは嬉しい」という状態です。憧れを作るというのが一番理想的な状態だと思っています。

採用ブランディングによって実現するプラスの成果

ブランディングのプラスの効果は様々な数字に跳ね返ってきます。認知が高まれば、エージェントが候補者に声をかけやすくなり、打診数が増えます。リーチとセットで自社イベントの参加者数も増えます。

「おもしろそう」と思ってもらえれば、応募やカジュアル面談からの選考が増えてきます。「興味がわく」「メンバーになれるのは嬉しい」と思ってもらえたら、内定承諾率が上がります。

なかなか効果が見えづらい部分もありますが、しっかり数値のビフォーアフターを取っていくことによって計測はできますし、効果が出ると思っています。

“プラス”の成果をもたらしたイオンとの取り組み

採用ブランディングがもたらすプラスの効果という概論的なお話をしてきましたが、ここからはイオン株式会社(以下、イオン)の事例でどんなことをやってプラスの成果が出たのかをご紹介します。

イオンではエンジニア向けの情報発信が十分にできていないという実態があり、「イオンは規模が大きい、古い」というイメージを持たれていると捉えていました。一方で、新しいチャレンジをしていて、イメージとの大きなギャップを創出できる素地がありました。

そのギャップをしっかり伝えていこうということで、採用ブランディングとして3つの取り組みを実践しました。

採用ブランディングで行った3つの取り組み

一つ目はポジショニングで、差別化された価値を定義することです。候補者が求めていて、かつ採用競合となる他社にはない自社の魅力を見つけることが必要です。二つ目は、ポジショニングで定義した立ち位置やメッセージを伝えるツールを開発することです。三つ目は、対象となる候補者にリーチすること、伝えることです。これらの取り組みについて、イオンのケースでどのように行ったかを具体的にお話します。

1.ポジショニングー競合と差別化された自社の魅力を定義する

まずはポジショニングです。イオンは圧倒的な規模感があり、事業領域は社会や生活インフラに関わる領域です。それに加えて、とても大きな意思決定ができます。文化的な意味でもポジション的な意味でも、これから変えていくというフェーズ的な意味合いでも、エンジニアが大きい決定をリードできる機会があります。

「これらが掛け算されてる会社は、実はイオンだけなのではないか?」というのを、差別化するポイントとして定めました。

抽象度が高いかもしれませんが、一言で言うと「エンタープライズ企業でエンジニアとして面白いことやるならイオン」という状態を目指そうということで活動を始めました。

ポジショニングの成功状態の目安として「AするならB社」と認知されることが重要です。この構文に当てはまるような文章を作るのは、ポジショニング開発の一つの方法だと思います。

2.ツールー自社の強みを具体的に表現して候補者を「口説く」

次に、ツールを作っていきました。このときにコアになったのは採用スライド資料です。ポジショニングを表現する具体的な取り組みをスライドに集約し、集まった情報を派生的にブログにしたり、イベントにしたり、PR対応しています。

ツールにもかなりこだわりを持っていて、いわゆる「会社紹介スライド」ではなく、対象となる候補者が欲しいこと、かつ競合に勝っていることを踏まえて、「口説く」ことを意識したスライド構成にしています。

例えば、「イオンはエンジニアとしてのトラックレコードをつくれる環境」「他では得られない経験と経歴」というように、相手が求めるものであり自社の強みでもある部分を明示し、さらに数字や具体的な事例・エピソードを使って表現しています。

エンジニアフレンドリーな言葉遣いや、具体的な事実の記載にもこだわっていて、サービス単位・システム単位での技術的な挑戦を具体的に解説したり、イオンが実際に行っているチャレンジを紹介しています。

3.リーチー連続的な発信活動を行う

発信する素材を作ったら、それをリーチさせるために連続的な発信活動を行いました。テックブログを立ち上げたり、イベントに登壇させてもらったり、スライドとWebサイトを公開したり、オウンドメディア主催イベントを広げていったりと、多くの取り組みをさせていただきました。

ブランディングの反響とプラスの効果

3つの取り組みによって、いくつかの成果を得られました。

スライドとWebサイトをオープンした際には、「イオンの本気が伝わる」「めっちゃいいな」「未来の具体的なところが語られていたグッときた」や「規模すごい」「働けたら楽しそう」など、SNSでいろんな反響をいただきました。やはり、ターゲットが欲しがっているもので、かつ強みになっているものを適切な言葉で表現していったところが良かったのだと思います。

イベントは自社主催や他社と共催のものも含め、多くの方にご参加いただいています。

テックブログを立ち上げて、アドベントカレンダー(12月1日からクリスマスまで連続でブログを書く企画)を開催した際には、「そもそもアドベントカレンダーを書くのはすごい」ということも含めて、様々な評判をいただきました。

オウンドメディアでは、社会や生活インフラを変えていくようなイオンの挑戦を発信するコンテンツを用意していて、「面白そうなトライ続けてる」「大事な視点が詰まってる」という反響をいただいています。

まだまだもっとできる部分はありますよね、とイオンともお話していますが、「エンタープライズ企業でエンジニアとして面白いことをやるならイオン」という一定の認知は、もしかしたら持っていただけているのではないかと思っています。

波及効果として、スタートアップの映像メディア『PIVOT』を始め、様々なメディアに取材いただいたり、イベント登壇のお声がけをいただいたりしています。採用候補者だけではなくメディアの方に広がることによって、その先にいる読者の方、将来的に候補者となる方に広がっていく効果があり、非常にROIの高い取り組みになっていると思います。

具体的な数値は伏せますが、活動から半年強で数字としてもいくつかのプラスの効果が出ています。ブランディングがあったことによって、エージェントからの紹介数もかなり増えています。イベントの参加者が1,000名を超えたり、内定承諾率がこれまでの数倍になったり、キャリア登録やニュースレター登録という形で「タレントプール」と呼ばれる潜在的な候補者の方の数も増えています。

ROIを高める“ストック型”採用ブランディング

イオンの活動をさせていただく中で、ROIをより高めていくためには「ストックしていく」という発想で取り組むと、より効果が大きくなると実感しています。

ストックにはブランド価値、コンテンツ、タレントの3つがあります。

まずはブランド価値のストックです。

大きい投資を分散的にやるよりも、大きい投資の後に小さくても連続的に活動を行った方が、人間の脳のメカニズムとしても記憶に残ります。

1回出ても、その後数か月何も音沙汰がなければ忘れられてしまいます。一方で、ドーンと出た後にその後も継続的な発信があれば記憶に刷り込まれるので、その後の投資が仮に少なくなったとしても記憶の効果が持続し、結果的に投資額が同じでもROIは高くなるケースがあります。

イオンの場合は、3ヶ月ほどの期間でかなり密度を濃く連続して施策を仕込み、効果を持続させてきました。

二つ目はコンテンツのストックです。

とりあえず誰かのインタビューや入社した人の声を発信するのではなく、ポジショニングに沿ったコンテンツを発信していくことが重要だと考えています。

候補者が求めていることで競合に勝っている自社の強みという部分なので、採用ファネルの後ろの方のフェーズ、面談した後に興味を持つ、より好きになる、内定を承諾するところに影響してきます。コンテンツは単に知ってもらうだけではなく、その先にも影響する側面があります。

イオンではオウンドメディアのタグラインを「社会を変革するイオンの挑戦と人と働き方”を伝えるメディア」と定めています。大規模な生活インフラの中で裁量を持ってやっていけるということがしっかり伝わるようなコンテンツを作ることによって、後々のフェーズにもじわりじわりと長く効くのです。

最後はタレントのストックです。

ブログの読者やイベントの参加者、サイト訪問者など様々なコンテンツの接触者を自社のタレントプールとして転換・蓄積し、自己応募転換やスカウティングを行うことによって、採用外注原価を抑えつつ、意欲の高い候補者を採用することができます。

イオンの事例を紹介させていただくと、connpassというイベントプラットフォームで自社のイベントを行っていて、半年で1,000名超のイベント参加者のコミュニティが形成されています。ニュースレター、キャリア登録、カジュアル面談などの導線を設けることによって関係性を構築するように取り組んでます。

ストック型採用ブランディングのまとめとして、分散単発より連続継続的な活動をすること、とりあえずではなくてしっかり長く効くコンテンツを意識すること、タレントをしっかりとプールしていくことによって、ROIが最大化されていくのではないかと思います。

最後に、明日からどんなことができるかというところです。まずは「AするならB社」構文に当てはまる言葉を考えてみて、候補者が求める、かつ競合に勝っている自社の強みを言語化します。それから“フロー”から“ストック”に変えるべき箇所を考えます。そして具体的な活動計画を書いてリソースを手配する、という段取りです。

もし、自社の差別化された価値を考えてほしい、魅力の発信・ツール化の制作を支援してほしい、タレントをスカウトするところも支援してほしい、といったご要望があれば、ぜひ当社にご連絡ください。

ポジショニングを決めていく部分のプロセスや、具体的なコンテンツの考え方・作り方などをnoteに書いていますので、ご覧いただけたら嬉しいです。

 

Q&A

Q1.忙しいエンジニアたちに採用ブランディングの価値を理解してもらい、協力を得る方法は?

すごく難しいですよね。採用が仕事だと思ってもらえていない場合は、なかなか協力を得られない場合があります。

そもそもエンジニアに協力してもらいたいのは、「どういったところが魅力なのかを聞きたい」「どんなことをやっているのか知りたい」「それを世の中に発信したい」という場面だと思います。

このとき大変なのは、エンジニアと担当者で会話が成立しないケースです。エンジニアとしては、話すだけならいいけれど、話しても伝わらない、かといって自分で書くのは大変、ということもあります。

エンジニアの話がわかるパートナーを隣に置くことで、エンジニア負担を減らして協力してもらいやすくするというのは一つの方法としてあると思います。

Q2.採用後のギャップを減らすために何を意識している?

おそらくネガティブをあまり伝えないで入社してもらっていたり、ポジティブな部分に下駄を履かせすぎたりすることでギャップが発生するのだと思います。

僕が意識しているのは、ネガティブをポジティブに変えること、ネガティブはありのまま伝えることです。一例としては、「会社の中身はまだごちゃごちゃしているけれど、そこが面白いし魅力です」というように、ネガティブをいかに面白さに変えていくか、仕事として見せて伝えていくかが重要です。

入社してくれる人が減る可能性はありますが、ネガティブを伝えてギャップを減らすことで、結果的にそのネガティブを受け止めてくれる方に来ていただけると思います。

Q3.エンジニア向けブランディングのファーストステップとしておすすめの方法は?

どの程度になりたいのか、それはなぜか、というところのベンチマークを決めるのが一番最初だと思います。ブランディングにも大きい・小さいがあり、採用規模が小さければ小さいブランディングでいいので、どのぐらいになりたいのか?ということは大事です。

Q4.若手の採用はうまくいっているのですが、本来欲しい中堅層以降の採用に苦戦しています。中堅層以降のブランディングで特に留意することは?

若手の求職者が求める魅力は成長環境や、働き方の柔軟性などがあるかと思いますが、中堅層以降が求めている魅力の認識にずれがあるんじゃないかなと思います。この中堅層がどんな人で、何が欲しいと感じているのかというところを確認できるといいと思います。

Q5.イオンの事例では、社内の人とはどう合意形成をしていったのか?

イオンのケースは、イオン・CTOの山﨑さんがお声掛けくださったことから始まりました。もっと情報発信することでプレゼンスを高められるという思いが山﨑さんにあり、お声掛けいただいて一緒に活動しているという経緯です。

社内の合意形成に関しては、トップの強い思いを基にして推進していただけたというのが回答になると思います。現状、イオンのグループ会社の皆さんと我々がハブになるような形で各社の採用目標や発信したいことを引き出しながら進めています。

Q6.トラックレコードはどのようにブランディングしている?

ベストデリバリー、ベストブランディング。良いデリバリーをするということに尽きると思います。

挑戦する企業の採用活動を支援する「TECH HIRE」

魅力的なミッション、イシュー、ケイパビリティを有しているのに、採用や広報活動が十分でなく、埋もれている優良企業が世の中には多数存在します。またエンジニアの力によってさらなる成長が期待できるのに、開発力を担保しきれずに、思うような成長を実現できていない企業も多く存在します。このような課題感をもつチームに対し、エンジニア採用領域に特化してサービス提供をしてきた実績、ノウハウ、ナレッジをもとに組織設計・母集団形成の戦略策定から実行をパートナーとして推進します。

無料相談も行っておりますので、自社の採用ブランディングやテック人材の採用に課題を感じている方は、お気軽にお問い合わせください。


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