2026年2月18日

事例インタビュー

「穴の開いたバケツに水を入れていた」状態から脱却。シニア層への魅力訴求を劇的に変えたアルダグラムの採用ピッチ資料刷新プロジェクト

建設・不動産業・製造業などのノンデスクワーク業界の「現場」が抱えるDXの課題は、日本に留まらず、アナログな環境が残る世界100カ国以上で共通しています。

このグローバルな課題解決に挑む現場DXサービス「KANNA(カンナ)」を開発・展開する株式会社アルダグラム。累計70,000社超で利用される急速な事業成長の一方で、エンジニア採用、特にシニア層(年収700〜800万円以上が目安)の獲得において壁に直面していました。

今回、同社はトラックレコードの支援により採用ピッチ資料を全面刷新。ターゲットの解像度を高め、既存のイメージを覆すメッセージを構築した結果、カジュアル面談からの内定への歩留まりが劇的に改善。これまで出会えなかったEM(エンジニアリングマネージャー)やAndoridエンジニアの採用についに成功しました。

ターゲット層への訴求力を高めるメッセージは、いかにして構築されたのか。開発部長の小野寺様と人事の森下様に、その具体的な変遷を伺いました。

会社名:株式会社アルダグラム
業種:IT
従業員数:約75名
コーポレートサイト:https://aldagram.com/
支援時期:2025年5月〜7月

ジュニア・ミドルは採れるが、シニアが来ない。採用再開で突きつけられた現実

アルダグラムは2024年、スタートアップを取り巻く市場環境の変化に合わせ、利益を出しつつ事業を進めるフェーズへと舵を切りました。事業計画を達成し、2025年から再びエンジニア採用のアクセルを踏もうとしたタイミングで、再び以前からの課題に直面しました。

アルダグラムの沿革

小野寺様:
私が在籍するより以前の話ですが、2024年は、経営基盤を強固にすることが最重要課題になり、一旦採用を止めていました。事業計画が達成できたので、25年から改めてアクセルを踏もうとなったのですが、もともとあった課題が顕在化しました。それは、ポテンシャル層〜ミドル層の採用は進む一方で、一定以上の経験と高い技術力・専門性を持ったシニア層になかなか興味を持ってもらえないという問題でした。

エンジニア採用においては、給与的に年収700~800万円前後で明確に属性が変わるタイミングがあります。700万円以下であれば自身の成長機会や技術的な挑戦に着目されますが、シニアに上がっていくにつれて、より社会的意義や事業のポテンシャル、成長性というところが需要視されるようになります。それまでの私たちは、シニア層がカジュアル面談にも来てくれないという大きな課題を抱えていました。

小野寺 良祐 / 開発部長
⼤⼿Slerを経て独立。フリーランスとして、スタートアップ中⼼に4年間で計6社の技術的ご⽀援。また、企業や学校等で教壇に立ちIT⼈材の育成にも注⼒。2020年ソフトバンクに入社。日本通運との共同会社設立に携わり、CTOとして4年間テック/プロダクト全般を牽引。退任後は技術顧問をしながら、3年間ファストドクターにEMとして参画。現在は、アルダグラムの開発部長としてエンジニア組織における様々な活動を統括している。

同社の掲げていた「現場DX」というカテゴリーが持つ先入観も、シニア層の足を遠ざける要因となっていました。

小野寺様:
弊社のポジショニングを「現場DXの会社」という見せ方をしていました。シニアの層は事業の意義に共感できるかが重要ですが、「現場」という言葉だけではイメージがつきにくいという側面がありました。どうしても泥臭いイメージを持たれてしまい、媒体でも「事業に興味が持てない」という理由で離脱されていました。

森下様:
当初から私たちの領域は後発でしたし、よく言えば「知る人ぞ知る」立ち位置でしたが、悪く言えば知る人がいないと成り立たない。小野寺は元々物流DXの業界にいた経験があるので、解像度も関心も高かったですが、通常はそうもいかないです。これまでもカジュアル面談をした結果、面白そうだと思ってもらえることは多いですが、裏を返せばアルダグラムを認知してくれた層への事前の訴求が不足していたことを示しています。そのため、接点をどう持つかがずっと課題でした。

森下 藍 / 人事
スタートアップの立ち上げ期に参画し、ゼロから組織づくりを牽引。中途・新卒採用、オンボーディング、人事制度設計など人事業務全般を統括した。その後、フリーランスとしてIT企業のエンジニア採用に従事。2025年よりアルダグラムに参画し、国内全般の採用を担当している。

求めたのは資料制作の代行ではなく、エンジニア採用に強い“第三者のブレーン”

採用課題を解決するため、アルダグラムは外部パートナーの導入を検討します。スタートアップとして投資対効果を最大化するためには予算をどこに投下すべきか。求められていたのは、単なる資料制作の代行ではなく、候補者への「ポジショニング」を再定義できるブレーンでした。

森下様:
当然スタートアップはお金も限られているので、どこに投資をしたら一番インパクトを出せるのか?と考えました。社内の広報メンバーは事業広報やプロダクト広報に強みがありますし、私もビジネスサイドの経験が多い。自分たちで洗い出せるものは出し尽くしていたので、もう一段二段上に行くには、違うブレーンを持ってくる必要がある。第三者として、エンジニア採用にパートナーとしてしっかり入ってくれるところを探していました。

小野寺様:
トラックレコードさんに関しては、私がイベントなどで名前を知っていて、一度聞いてみようとなりました。HRの知り合いに聞いても、エンジニア採用に強いという会社はそんなに多くないんですよね。どっちかというと「スカウトの工数削減できます」という話になりがちですが、トラックレコードはそうではありませんでした。

森下様:
欲しかったのは、単なるデザインとしての資料作成ではなく、本質的な課題分析からポジショニングや訴求内容を導き出す戦略設計の部分でした。採用の歩留まり、例えばカジュアル面談から一次、一次から最終といったところは自社でも問題ないと思っていましたが、その「前」のフェーズがお恥ずかしながら得意ではなかったので、新たな知見をいただけるところを探していました。

空中戦を終わらせた「言語化」と、一次情報への飽くなきこだわり

プロジェクトは、採用ピッチ資料の刷新を軸にスタートしました。トラックレコードのコンサルタントは、人事や開発部長だけでなく、現場のマネージャーへのヒアリングを実施。アルダグラムの「本当の強み」を掘り起こしていきました。

森下様:
会社・事業の魅力に関して、小野寺が思っていること、私が思っていること、役員が思っていることは概ね一致しています。しかし、それをうまく言語化できない。社内の共通認識を、外部に伝わる具体的な言葉に「翻訳」できず、議論が抽象的なまま進んでしまいそうな空中戦のような状態を、トラックレコードの野崎さんが言葉にしてまとめて、文章やメッセージにしてくださった。あの過程が非常にありがたかったです。

単に文字起こしをするだけではなく、CSや営業のマネージャーにもヒアリングを実施し一次情報の収集を行ってくれました。「紙でやっていることをDX化できたら楽だよね」という話を、具体的になぜ楽なのか、どう価値が届いているのかという深いところまで理解していただいた。それが結果的に良いキャッチフレーズや言葉に繋がったんだと思います。

特に、エンジニアの関心を引くために再定義されたのが「グローバル」の訴求です。

100カ国以上での利用実績を訴求

小野寺様:
現場DXと聞くと、ドメスティックに聞こえますが、実際には現場の課題は世界共通。むしろ海外の方がアナログで、困り度が高いんです。東南アジアなどでは日本より高い単価でサービスを買ってくれるケースもある。海外の方が課題意識が日本よりも高い場合もあるぐらいなんです。こういう「グローバルで事業が成立しつつある」という話を面談ですると、皆さん納得してくれるのですが、Webから資料を見るだけだと「現場の会社」としか見えていなかった。そのギャップを埋める必要がありました。

野崎さんのヒアリングは、エンジニアが作るものの最終的な価値がどう届いているのか、というところをしっかり把握しようとしてくれました。空中戦に終わらず「つまり一番言いたいことはこれですよね」と手触り感のある共通言語を作れたのが大きかったですね。


シニア層へのアプローチが奏功。カジュアル面談は「印象を変える場」から「一歩踏み込んだ対話の場」に

資料刷新から数ヶ月。アルダグラムの採用現場には、目に見える変化が現れました。

森下様:
定量的なデータで言うと、カジュアル面談に来る総数は微増ですが、最終面接や内定になる数は明らかに増えています。 アプローチしたかった層に適切に届けられるようになった結果だと思います。特にプレミアムスカウトなどの返信率は明らかによくなりました。以前までは、シニア層は結局カジュアル面談から一次に進まないということが多かったのですが、今は「本当に私たちがマッチしている人」が来てくれるようになっています。

小野寺様:
今年の前半までは、シニア層に刺さらないのがわかっていたので、ジュニアやミドルの中でポテンシャルがある人を探すようなやり方をしていました。資料をアップデートした後は、スカウトの対象を明確にシニア層寄りに変えたんです。面談数は同じでも、属性が明確に変わりました。

どこに魅力を感じたか聞くと「世界100カ国で利用されているグローバル感」や、資料に入念に盛り込んだ「お客様の声を直接聞く開発プロセス」を挙げてくれます。シニア層の方々は内容をしっかり見てくれていますね。

資料の存在は、面談の体験そのものも変えたといいます。

小野寺様:
カジュアル面談で候補者の質問に対する「打ち返し」がすごくやりやすくなりました。多くの場合、質問いただく内容は資料に盛り込んであるので、画面を見せながら説明できる。候補者にとっても資料にまとまっている方が納得感が高いですよね。

以前は「ドメスティックに見えるけどそうじゃないんだよ」というマイナスをゼロにする説明に時間を使っていましたが、そこは資料で解決されています。限られた1時間という中で、より深い追加情報を伝えることに時間を使えるようになりました。移行率でいうと、選考に進む意思がある方の8割は次へ進んでくれています。

また、ピッチ資料には「AI活用」のセクションもしっかり盛り込みました。

AI活用への積極的な姿勢

小野寺様:
AI活用が適切に行われているかは、シニア層が非常に重視しています。また、BtoBだとビジネス側の都合でスケジュールが決まってエンジニアが息苦しいという課題がよくありますが、当社は「開発側が主体的に優先度を決める」ということも明言しました。こうした「ワンチーム」での開発体制を資料でしっかり伝えたことで、共感してくれる方が増えました。

開発プロセスの特徴

EM(エンジニアリングマネージャー)の採用成功により、組織は次なるフェーズへ

今回の支援を通じて得られた最大の成果の一つが、難航していたEMの採用成功です。

森下様:
正直に申し上げると、私たちも目標未達の状態に慣れてしまっていた側面がありました。エンジニア8人の採用枠があっても、今のまま続けていたら「絵に描いた餅」になる。だったら一人分の採用費を外部に当ててでも、確実にシニアを獲りに行ったほうがいい。そのように役員と話して決めたのですが、結果的にEMが決まり、本当に良かったです。

小野寺様:
EMが決まり、来年にもさらにもう一人EMの入社が決まっています。マネージャーが入るとメンバーに対する影響力も大きいですし、空気が変わります。新しい人が来ること自体が一種のモメンタムになるので、すごくポジティブですね。

EMが採用できたことで、彼らがまた採用に携わってくれます。僕一人の個人技に頼るのではなく、組織として採用を加速させる土台ができました。今後は、誰が面接に出ても一定のクオリティで判断できる「構造化面接」の導入など、面接プロセス内部の最適化が次の課題です。

お二人は「会社選びの基準」や、組織としての採用に対する向き合い方についても語ってくれました。

小野寺様:
私自身の会社選びの基準としては、事業が向き合う業界が労働集約的であり、システム化が急務と業界的に認識はされながらも、なかなかテクノロジーの恩恵が行き届かないような、そんな業界課題にチャレンジしている会社であることでした。寄り添いがいがあり、手触り感があり、大きな社会課題の解決という大義も感じられる。採用活動においては、そのような社会的な意義を正しくお伝えしたくて、今回のプロジェクトを通じてそのあたりも正しく可視化できたことは、シニアエンジニア採用において非常に大きな意味がありました。

森下様:
私が入社した時からずっと伝えているのは、採用や組織開発において人事は「ディレクター」であって「アクター」ではないということです。自分たちの組織を採用するのは、現場のみんなに主導してほしいし、自分事として捉えてほしい。だからこそ、スカウトもかつては全員で時間を取って打っていましたし、カジュアル面談も私は同席せず現場主導でやってもらっています。こうした協力体制があるからこそ、今回のような資料刷新も自分たちのこととして活用され、成果に繋がっているのだと感じています。

採用ピッチ資料を検討している企業へのメッセージ

プロジェクトを終え、小野寺様と森下様は「採用ピッチ資料」の重要性を改めてこう強調します。

小野寺様:
採用ピッチ資料がない不完全な状態でスカウトを打つのは、穴の空いたバケツに水を入れるようなものです。上期は募集要項の最適化などを頑張っていましたが、全然効果がありませんでした。逆に、ピッチ資料をアップデートした後は送信数を増やしても、返信率は良くなりました。

つまり、スカウト文面のチューニングに時間をかけるよりも、良いピッチ資料が1枚あることのほうが遥かに効果的なのです。候補者は最終的にピッチ資料の内容を見て関心を持つため、ここが最も重要なポイントだと考えています。

森下様:
人事の観点で言うと、今はカジュアル面談に行く前の意思決定がピッチ資料で行われているような気がしています。どの会社もカジュアル面談をやるからこそ、エンジニアは「資料を見て、面談に行く価値があるか」をマイジャッジしている。そこがいかに充実しているかは非常に重要です。

トラックレコードさんの魅力は、ただ作るだけでなく、現場の課題感を一次情報として拾いに行って言語化してくれるところです。ピッチ資料を作ることがゴールではなく、その前の「提供価値は何か」を一緒に掘り下げてくれました。エンジニア採用に長けているプロがプロジェクトに入ってくれることで、市場感に即したリアルな話ができた。エンジニア採用を本気で変えたいなら、ここが大きな違いになると思います。

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