2026年7月14日

採用ノウハウ

DevRelとは?採用を目的にしないほどエンジニアが集まる理由

エンジニア採用がなかなか前に進まない。求人を出しても応募が集まらず、スカウトを送っても返信が来ない。そんな状況が続くと、「そもそも自社のことがエンジニアに知られていないのでは」と感じる場面も増えてくるのではないでしょうか。

そこで注目されているのが「DevRel(デブレル)」という取り組みです。

ここでは、DevRelの基本から、エンジニア採用におけるメリット、始め方5ステップまで解説します。実際にDevRelで成果を上げたイオン株式会社様の事例も紹介します。

note記事を1本増やすと、翌年のエンジニア採用が平均0.72人増える?

DevRelとは?開発者と信頼関係を築く活動

DevRelという言葉を初めて聞くと、専門的で難しそうに感じるかもしれません。

しかし中身は「エンジニアと良い関係をつくる活動」であり、やっていること自体はテックブログや勉強会など、身近なものが中心です。

ここでは、DevRelの定義、主な活動、技術広報・採用広報との違いを整理します。

 

DevRelの定義と目的

DevRelとは、企業が外部の開発者(エンジニア)と信頼関係を築き、自社への理解や好意を育てていく活動のことです。「Developer Relations(デベロッパーリレーションズ)」を略した言葉で、直訳すると「開発者との関係づくり」を意味します。

目的は、開発者にとって役立つ情報や体験を届けながら、企業や開発組織への理解を深めてもらうことです。採用だけを目的にするのではなく、技術への向き合い方や開発文化を社外に開き、長期的な信頼を積み上げていく点に特徴があります。

 

DevRelの主な活動

DevRelの活動は幅広いですが、日本の企業でよく行われているのは次の3つです。

テックブログ・技術記事の発信

テックブログは、DevRelのなかでも始めやすい施策です。技術選定の背景、開発で得た知見、失敗からの学び、開発プロセスの改善などを発信することで、社外のエンジニアに自社の考え方を伝えられます。

採用目的を前面に出すよりも、同じ課題に向き合う開発者に役立つ内容を意識することが大切です。その積み重ねが、結果として採用ブランディングにもつながります。

始め方や運用のコツは、テックブログとは?運用や活用方法で詳しく解説しています。

勉強会・カンファレンスの開催や登壇

勉強会やカンファレンスは、エンジニアと直接つながれる場です。
自社で勉強会を主催したり、外部のカンファレンスに自社のエンジニアが登壇したりして、技術や取り組みを共有します。

対面やオンラインで顔が見える分、記事よりも深い信頼が生まれやすいのが利点です。登壇したエンジニアが業界で名前を知られるようになると、その発信力そのものが会社の資産になっていきます。

開発者コミュニティの運営

コミュニティ運営は、一度きりで終わらせず継続的な接点をつくる活動です。
SlackやDiscord、connpassといった場でエンジニアが集まれる場所をつくり、イベントや情報交換を重ねていきます。

すぐに採用や売上につながるものではありませんが、「困ったときに助け合える関係」が積み重なると、その企業への信頼は着実に高まっていきます。

技術広報・採用広報との違い

DevRelは、技術広報や採用広報とよく似ていますが、目的と対象が少しずつ異なります。混同されやすいので、違いを整理しておきましょう。

項目

DevRel

技術広報

採用広報

主な目的

開発者との信頼関係づくり

企業の技術力の認知向上

採用候補者の応募促進

主な対象

社外のエンジニア・開発者

メディア・顧客・投資家など広く

求職者・採用候補者

主な活動

技術発信・イベント・コミュニティ

技術記事・プレスリリース・登壇

採用サイト・採用イベント・SNS

成果が出る期間

中長期

中長期

比較的短期

日本では、これらの活動が重なり合っていることも多く、はっきり線を引けない場合もあります。
DevRelを「技術発信を軸に、エンジニアとの関係を長期で育てる活動」、技術広報を「企業の技術力を社会に広く伝える活動」と捉えると整理しやすいでしょう。

エンジニア採用におけるDevRelのメリット

DevRelは成果が見えるまで時間がかかるため、「本当に採用につながるのか」と疑問に感じる方もいるかもしれません。

ここではエンジニア採用におけるDevRelの主なメリットを解説します。

転職潜在層との接点が生まれる

DevRelの大きなメリットは、今すぐ転職を考えていないエンジニアとも接点を持てることです。
IIJの情シス・DX部門の人材不足に関する調査(2025年)では、回答者の約8割が人材不足を感じ、採用への応募が少ないと感じる企業も約6割にのぼりました。求人を出して待つだけでは、十分な応募を集めにくい状況です。 

こうしたなかで重要になるのが、DevRelによる継続的な発信です。
LAPRASの調査(2025年)では、直近の転職でその会社に興味を持ったきっかけとして「企業のテックブログ」が挙げられています。

特に年収700万円以上〜1000万円未満では、「とても・少しきっかけになった」を合わせて50%強となっており、技術発信が転職検討時の企業理解に影響していることがうかがえます。

出典:lapras株式会社「【2025年最新版】ITエンジニアに聞いた!直近の転職先に興味を持ったきっかけは?

技術ブログや勉強会で有益な情報を届け続けていると、転職を具体的に考えていないエンジニアにも「気になる会社」として認知されやすくなります。いざ転職を考えたときに思い出してもらえる会社になることが、DevRelの大きな価値です。

応募者のマッチ度と定着が高まる

DevRelを続けると、応募してくる人の「質」が変わります。技術ブログやイベントを通じて、自社がどのような技術課題に向き合い、どのような考え方で開発しているのかを、応募前から知ってもらえるためです。

その結果、選考では会社説明に多くの時間を使うのではなく、チームの課題や仕事の進め方、入社後に任せたい役割など、より具体的な話に進みやすくなります。候補者にとっても、自分の経験や志向と合うかを判断しやすくなるでしょう。

入社前の理解が深まれば、「思っていた環境と違った」というギャップも生まれにくくなります。採用の母数を増やすだけでなく、長く活躍してくれる人と出会いやすくなることも、DevRelの重要な価値です。

DevRelの始め方5ステップ

いざDevRelを始めようとすると、「何から手をつければいいのか」で迷いがちです。

やみくもに記事やイベントを増やしても、続かなかったり、成果が見えずに社内で止まってしまったりします。
大切なのは、目的を決めてから小さく始め、少しずつ広げていくことです。

ここでは、無理なく続けるための5つのステップを解説します。

①目的と届けたい相手を決める

最初に決めるべきは、「何のためにDevRelをやるのか」という目的です。ここが曖昧なまま始めると、活動が続かなくなります。

このとき注意したいのが、採用数だけを主目的に置きすぎないことです。
「何人採用できたか」を第一のゴールにすると、発信が売り込みっぽくなり、エンジニアに敬遠されてしまうことがあります。

DevRelは、まず「エンジニアに価値ある情報を届けて信頼を得る」ことを目的に据え、採用はその先に自然についてくるものと捉えると、うまく回り始めます。あわせて「どんなエンジニアに届けたいのか」という相手像も描いておきましょう。

②社内の発信体制を整える

次に、発信を「誰が、どう続けるか」という体制を整えます。DevRelは一度きりでは効果が出ず、続けることではじめて意味が生まれるからです。

ありがちな失敗が、特定のエンジニア一人に負担が集中して、その人が忙しくなった途端に止まってしまうケースです。

複数人で分担する、業務時間内に書いてよいことにする、経営層が発信を後押しするなど、無理なく続く仕組みをつくることが欠かせません。書き手が「書いてもいいんだ」と思える空気づくりも大切です。

③テックブログなど小さく始める

体制ができたら、まずはテックブログのように始めやすいものから着手します。いきなり大きなイベントを企画するより、小さく始めて形にするほうが続きます。

最初から完璧な記事を目指す必要はありません。開発でつまずいた話や、ちょっとした工夫でも、他のエンジニアには十分に価値があります。まず公開してみて、反応を見ながら改善していく。この積み重ねが発信の習慣になっていきます。

④イベント・コミュニティに広げる

発信に慣れてきたら、勉強会やコミュニティといった「人と直接つながる場」へ広げていきます。記事だけでは届かない層に、対面やオンラインで会える機会をつくるためです。

自社主催の勉強会でもよいですし、外部カンファレンスへの登壇から始めるのも有効です。顔が見える場での交流は、記事よりも深い信頼を生みます。参加してくれたエンジニアとの関係が、後の応募や紹介につながることも少なくありません。

⑤振り返って改善を続ける

最後に、活動を振り返りながら改善を続けます。DevRelは長く続ける活動なので、成果の見方を工夫しないと社内で評価されにくくなります。

ここでのコツは、「活動量の指標」と「成果の指標」を分けて見ることです。記事の本数やイベントの開催回数といった活動量は、努力がすぐ数字に表れます。

一方、採用や認知への効果は時間をかけてじわじわ表れるため、短期の数字だけで判断しないことが大切です。

事例|イオン株式会社が進めたエンジニア向け採用ブランディング

ここでは、株式会社トラックレコードが支援したイオン株式会社様の事例を紹介します。

イオン株式会社様は、エンジニア採用を強化するなかで、DevRel(開発者との関係づくり)を軸に、 技術組織の魅力を候補者に届ける採用ブランディングに取り組みました。

背景:エンジニアに届く発信の接点を広げるフェーズだった

イオン株式会社様がDevRelの第一歩としてまず整えたのは、エンジニアに向けた情報発信の土台です。
採用サイトや会社紹介資料を制作し、技術組織の魅力や働く環境を候補者に伝えやすい状態に整理しました。

そのうえで、DevRelの活動として複数の接点を組み合わせながら発信を継続しています。

成果:候補者の質が変わった

2年強の取り組みは、採用現場と組織の両面で具体的な成果につながりました。

  • 記事やイベントをきっかけに接点を持った候補者が、面談者の半数以上を占めるようになった

  • 候補者が事前に記事や資料を読んだうえで面談に進むようになり、チームの状況やプロダクトの課題など、具体的なテーマから会話を始められる場面が増えた

  • 蓄積したコンテンツも着実に届き、エンジニア向け会社紹介資料は66,000リーチ超、技術カンファレンスの登壇資料は12,000リーチを記録した

  • 人材紹介エージェント経由の候補者からも「発信を見ていたからこそイオンに決めた」という声が生まれた

事例から学ぶ|成果につながった「採用を主目的にしない」考え方 

DevRelがうまくいくかどうかは、「採用を主目的にしないこと」で決まります。

採用を主目的にすると、発信はどうしても「売り込み」になり、エンジニアはかえって離れていきます。
逆に、役立つ情報を届けることを目的にすると、信頼が生まれます。その積み重ねが「この会社で働きたい」という気持ちを育てます。

DevRelは、応募数や採用数ですぐに成果を測れる施策ではありません。
それでも発信を続けるほど、候補者は応募前から会社を理解してくれます。
面談では、すでに技術組織を知る人と話せるようになり、エンジニアに選ばれる会社へ近づいていきます。

イオン株式会社様は、まさにこの順序をたどった事例です。

詳細はインタビュー記事をご覧ください。

前編「『もったいない場所にいる』からエンジニアに選ばれる組織へ」
https://techhire.trackrecords.co.jp/media/aeon-1

後編「『前提条件を変数にしない』──KPI・稟議を超える、AI時代の採用ブランディングと覚悟とは?」
https://techhire.trackrecords.co.jp/media/aeon-2

発信が多い会社ほど、採用もうまくいっている──17社×5年で検証

DevRelに関するよくある質問

最後に、DevRelを検討する際によく寄せられる質問をまとめました。

DevRelとDevOpsの違いは何ですか?

DevRelとDevOpsは、名前は似ていますが目的がまったく異なります。


DevRelは社外のエンジニアと信頼関係を築く「関係づくり」の活動です。
一方のDevOpsは、開発(Development)と運用(Operations)を連携させ、ソフトウェアの開発・提供を効率化する「開発手法」を指します。

DevRelは採用や広報に近い領域、DevOpsは開発現場の領域と考えると区別しやすいでしょう。

DevRelの担当者はエンジニアでないと務まりませんか?

必ずしもエンジニアである必要はありません。
技術的な内容を扱うため、エンジニアが担当したり、エンジニアと連携したりするケースは多く見られます。

ただし、コミュニティ運営やイベント企画、記事の編集といった業務では、広報やマーケティングの経験を持つ人が力を発揮する場面も多くあります。エンジニアと非エンジニアがチームを組んで進める企業も少なくありません。

DevRelにかかる費用はどれくらいですか?

DevRelの費用は、取り組む範囲によって大きく変わります。
テックブログのように社内のエンジニアが書けば、費用をほとんどかけずに始めることも可能です。

一方、大規模なカンファレンスの主催や、専任の担当者を置く場合は相応のコストがかかります。まずは小さく始めて、成果を見ながら投資を広げていくのが現実的な進め方です。効果が見えにくいと感じる場合は、外部の支援サービスを活用するのも一つの手です。

DevRelは信頼づくりを軸に設計し、エンジニアに選ばれる会社を目指そう

DevRelは、エンジニアと信頼関係を築き、自社を「選ばれる会社」に育てていく中長期の取り組みです。テックブログや勉強会、コミュニティ運営を通じて、求人広告だけでは届かない層と接点を持ち、応募者の質や定着にもよい影響をもたらします。

とはいえ、DevRelや技術発信は、始めたいと思っても「社内に体制がない」「何から進めればいいかわからない」という壁にぶつかりがちです。トラックレコードは、発信の戦略設計から体制づくり、コンテンツ制作までを伴走支援しています。

自社らしい発信を積み重ねて、エンジニアに選ばれる組織づくりを一歩ずつ進めていきましょう。

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