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生成AIの利用が広がるなか、AIに関する最終判断を誰が担うのかが経営課題になっています。部門ごとにAIツールを導入しても、投資の優先順位や安全性の基準がばらばらでは、会社全体の成果につながりません。
そこで注目されているのが、CAIO(最高AI責任者)です。米国ではCAIOを置く企業が1年間で約3倍に増え、国内でも設置する企業が増えています。
本記事では、CAIOの基本的な役割、CAIOを置く会社が増えている背景、他のCxOとの違い、CAIOに向く人材と採用の仕方を、人事・採用担当者にも分かりやすく解説します。

CAIO(最高AI責任者)はChief AI Officerの略称で、企業のAI戦略を経営の立場から統括する責任者です。
ここでは、CAIOの定義と、国内外でどれくらい設置が進んでいるのかを見ていきます。
CAIOとは、AIを使って事業価値を生み出す「攻め」と、安全・適正に利用するための「守り」を同時に統括する最高AI責任者です。
CAIOの役割は、生成AIツールの導入責任者や、AIエンジニアの管理者ではありません。
経営戦略、投資、技術、データ、人材、ガバナンスをつなぎ、会社としての意思決定を担います。
AISI(AIセーフティ・インスティテュート)が2026年3月に公表した「Chief AI Officerガイド」でも、CAIOはAIによる価値創出と責任ある活用を両立する役割とされています。どの課題へAIを使うのか、どの案件へ予算を配分するのか、成果をどう測るのか、問題発生時に誰が判断するのかまでを設計します。
つまりCAIOは、AIに最も詳しい人というより、AIを経営成果につなげる責任を持つ人です。
技術の可能性だけでなく、現場への定着や法務・セキュリティ上のリスクまで見渡す必要があります。
電通デジタルは2025年1月にCAIOを新設し、全事業でAI活用を進める横断組織「AI Native Twin」を始動しました(電通デジタル 公式リリース)。CAIOの主導のもと、各事業領域にAI活用のミッションを置き、業務効率化だけでなく、サービスの高度化や新しい価値の創出を進めています。
この事例のポイントは、CAIOという肩書だけを設けたのではなく、全社横断組織、各部門の目標、教育や共通ツールを組み合わせたことです。CAIOが成果を出すには、本人の能力だけでなく、各部門を動かす権限と実行組織まで考える必要があります。
IBMが世界のCEO約2,000人に行った調査(2026年)によると、CAIOを設置した企業の割合は1年で26%から76%へと約3倍に増えました。数年前まではめずらしかった役職が、いまや標準になりつつあります。
一方で日本は、まだこれからの段階です。電通デジタルのような先行企業は出てきたものの、多くの会社では「AI担当をどう置くか」の議論が始まったばかりです。裏を返せば、米国がすでに通った道を見てから設計できるということでもあります。
CAIO以外にも、米国では、AIを活用した採用、評価、育成、人員計画、エンゲージメント、法規制すべてでAI活用が進む一方、人員削減の撤回や候補者の不信といった失敗も表面化しています。
トラックレコードが調査した「AIで変わる人事・採用 米国最新動向レポート 2026」では、AI活用が進んだ先で企業に何が起きているのか、日本企業は何を先取りすべきなのか、CAIOを設置している国内企業などを紹介しています。人事・採用の次の一手を考えるヒントとしてお役立てください。


CAIOが増えている理由は、生成AIが急速に普及したからだけではありません。
ここでは、CAIOが求められるようになった2つの背景を解説します。
大きな理由の一つは、AIが単なる業務効率化の手段ではなく、事業を動かすうえで欠かせない存在になってきたことです。
数年前まで、AIといえば「議事録を要約する」「文章作成を手伝う」といった、日々の業務を補助する使い方が中心でした。しかし生成AIの普及によって、今では商品企画やマーケティング、顧客対応、開発など、事業のさまざまな場面で活用が進んでいます。
そうなると、「どの領域に積極的に投資するのか」「どこはリスクを見ながら慎重に進めるのか」といった判断も必要になります。個別の部署だけで決めるのではなく、会社全体を見ながらAI活用の方向性を決める。そこで必要とされるのが、CAIOという役割です。
AIには生産性向上や新規事業の可能性がある一方、情報漏えい、著作権侵害、誤情報、バイアス、個人情報の利用、説明責任といったリスクがあります。現場の利用を止めすぎれば競争力を失い、自由に使わせすぎれば問題や信用低下につながります。
CAIOには、利用を一律に制限するのではなく、リスクに応じてルールを変える判断が求められます。
社内で使われるAIやデータ、委託先を把握し、利用目的に応じた審査、承認、記録、監視の仕組みを整えます。事業部門、法務、IT、セキュリティ、人事をつなぐことも重要な役割です。

CAIOを新設する際に最も起きやすいのが、既存のCxOとの役割重複です。役職名だけを増やすと、AI投資を誰が決めるのか、問題が起きた際に誰が責任を持つのかが、かえって分かりにくくなります。
役職 | 主な管掌 | CAIOとの違い・連携 |
|---|---|---|
CAIO | 全社AI戦略、投資、ガバナンス、人材・組織 | AIによる価値創出とリスクの最終責任を持つ |
CTO | 技術戦略、プロダクト、開発基盤 | AI技術の選定や実装でCAIOと連携する |
CIO | 社内IT、情報システム、IT投資 | 既存システムとの接続や運用基盤を担う |
CDO | データ戦略、品質、利活用基盤 | AIに必要なデータの整備と管理を担う |
CISO | 情報セキュリティ、問題発生時の対応 | AI特有の安全問題や外部サービスを管理する |
実務では、CAIOがすべてを単独で決めるのではありません。CAIOが全社方針と優先順位を示し、CIOやCDO、CISOと連携しながらAI活用の全体を束ねるのが、CAIOの立ち位置です。
新設するときは、この線引きを社内で先に決めておくことが大切です。役割が曖昧だと、せっかくCAIOを置いても意思決定が滞ってしまいます。

CAIOの仕事は幅広く、一言でまとめるのは難しいものです。
ここでは、代表的な4つの役割を順に見ていきます。
この領域でCAIOに任せるのは、経営計画を具体的なAI投資へ落とし込む仕事です。
各部署から持ち込まれるAI施策を、期待できる売上やコスト削減効果、実現までの期間、必要な人材、リスクなどで比較します。そのうえで、予算をつける案件、試験導入にとどめる案件、止める案件を判断します。
採用時には、CAIOがAI投資について「提案する立場」なのか、「予算配分や中止まで決められる立場」なのかを明確にしておく必要があります。ここが曖昧だと、経営責任者ではなくAIプロジェクトの進行管理者になりかねません。
CAIOには、社内で利用されているAIを把握し、用途に応じた審査や承認の仕組みを整える仕事も任せます。
具体的には、
利用中のAIをまとめた台帳
入力してよいデータの基準
外部サービスの審査方法
問題発生時の報告ルート
などを整備します。
すべてのAIを同じ基準で管理するのではなく、利用者や従業員への影響が大きいものほど厳しく確認する設計が必要です。
EU AI Actでは、採用や従業員管理に使う一部のAIが「高リスク」に位置づけられています。対象となる企業には、人による監督、運用状況の確認、記録の保存、対象となる従業員などへの事前通知が求められます。
海外拠点を持つ企業やグローバル採用を行う企業では、こうした規制を踏まえて社内ルールを更新できることも、CAIOへ求める重要な役割です。
AIを全社で利用するには、部署ごとに異なるツールを導入するのではなく、共通して使える環境を整える必要があります。
CAIOに任せるのは、
自社開発と外部サービスの使い分け
全社で利用を認めるAIの選定
データへのアクセス権限
利用履歴の保存方法
などに関する方針決定です。
実際のシステム開発をCAIO本人が担うとは限りませんが、技術部門へ要件を示し、会社としての判断を下す役割を持ちます。
採用時には、技術開発まで任せるのか、技術やデータに関する方針決定を任せるのかを切り分けることが重要です。CTOやCIO、CDOがすでにいる企業では、責任範囲を先に整理しておく必要があります。
CAIOには、AI導入後に必要となる職種やスキルを定義し、組織の変化を進める役割もあります。
たとえば、AI開発を担う専門人材だけでなく、各事業部でAIの利用方法を考える担当者、AIのリスクを確認する担当者、現場への導入を支援する担当者など、必要な役割を整理します。既存社員の育成で補うのか、外部採用するのかも判断の対象です。
また、AIによって業務の一部が自動化される場合は、職務や評価基準をどう変えるのかまで設計する必要があります。
CAIOの採用要件には、AI人材の採用経験だけでなく、職務の再設計やリスキリング、部門をまたぐ組織変革を進めた経験も含めると、実際の役割とのずれを防ぎやすくなります。

ここまで読むと、「では、どんな人に任せればいいのか」が次の悩みどころになるはずです。
CAIOに求められるのは、技術・経営・リスク管理を横断して見られる人材です。ただ、そうした人はまだ市場に多くなく、確保のしかたには工夫が要ります。
ここでは、CAIOに向く人材像と、自社で確保する具体的な方法を整理します。
CAIOに向くのは、技術とビジネスの「翻訳」ができる人材です。具体的には、次のような素養が求められます。
AIや機械学習の特性・限界を見極められる技術理解
現場の業務をAIで作り変え、成果につなげるビジネス構想力
著作権や個人情報、セキュリティのリスクに気づける感度
経営層と現場、技術と非技術の間をつなぐリーダーシップ
すべてを完璧に備えた人は多くありません。足りない部分を周囲の体制で補う前提で考えると、候補の幅が広がります。
CAIO人材の確保には、大きく3つの方法があります。
自社の規模や成熟度によって、向いているやり方は変わります。
確保のしかた | 向いている企業 | メリット | 気をつけたい点 |
|---|---|---|---|
社内から登用 | 自社を深く理解した人材がいる大企業・中堅企業 | 事業と現場に精通し、意思決定が速い | AIや法務の最新知識は学び直しが必要 |
外部から採用 | 専門人材を本格的に迎えたい企業 | 最新の技術・ガバナンス知見が入る | 採用競争が激しく、条件面の負担も大きい |
外部顧問・伴走支援 | まず小さく始めたいスタートアップ・中小企業 | 低コストで専門知見を取り入れられる | 社内にノウハウを残す工夫が必要 |
大企業なら専任のCAIOを置いて全社組織で支える形が向きます。
中堅企業ではCIOやCTOが兼任し、部門横断チームで進めるやり方が現実的です。
スタートアップや中小企業では、まず経営トップが旗を振り、外部顧問を活用しながら少しずつ体制を整えるのが無理のない進め方です。
CAIOに適した人材の採用は、決して簡単ではありません。AIの技術だけでなく、経営や組織への理解も求められるため、条件に合う人材そのものが限られているからです。
AI人材の獲得競争も激しくなっています。PwCの調査(2025年)によると、AIを使える人材への給与の上乗せ率は前年の25%から56%へ上昇していることがわかりました。トラックレコードが行った米国のAI人材動向を調査でも詳しく紹介しています。
またCAIOのような新しい役職では、役割や採用要件をどう定め、どの層にアプローチするかという設計も重要です。人物像が曖昧なまま採用を始めると、候補者が集まらないだけでなく、入社後のミスマッチにもつながります。
トラックレコードでは、1年間でエグゼクティブ層を含む22名の内定承諾を実現するなど、ハイクラス採用の支援もしており、採用戦略の設計から求人票の言語化、スカウト、採用ブランディングまで一気通貫で行っています。CAIOを置くべきか、どのような人材を採用すべきかという段階からご相談いただけます。


最後に、CAIOの設置を検討する際によく寄せられる質問にお答えします。
判断に迷いやすいポイントを整理しました。
CAIOに、特定の国家資格や認定は必要ありません。あくまで社内の役職であり、法律で資格が定められているものではないためです。
ただし、任せる人には技術・経営・リスク管理を横断して判断できる力が求められます。資格の有無よりも、AIを事業にどう活かし、どうリスクを抑えるかを実務で語れるかどうかが見極めのポイントです。
規模や業種を問わず、AIを事業に取り入れるなら検討する価値があります。専任である必要はなく、経営者や既存役員が兼任する形でも十分に機能します。
近年は取引先から「AIをどう管理しているか」を問われる場面も増えており、説明できる体制の有無が信頼につながります。まずは責任の所在をはっきりさせるところから始めるとよいでしょう。
技術出身であることは強みになりますが、必須ではありません。大切なのは、技術とビジネスの両方を理解し、橋渡しできることです。
実際には、技術に明るい人がビジネス感覚を補ったり、事業側の人が技術を学んで就任したりと、出身はさまざまです。足りない部分をチームで補う前提であれば、出身分野にこだわりすぎる必要はありません。
CAIOは、AIの「攻め」と「守り」を経営の立場から束ねる役職です。米国では設置が1年で3倍に増え、日本でも電通デジタルなど先行例が出始めています。他の役職との違いを整理し、担う4つの役割を踏まえたうえで、自社に合った人材像と確保の方法を描くことが、設置成功の第一歩になります。
とはいえ、AIに精通した人材の採用は難易度が高く、求める人物像の言語化から悩む企業も少なくありません。
トラックレコードでは、採用戦略の設計から採用ブランディングまでを一気通貫で支援しています。AI時代に選ばれる組織づくりを、採用の面から一緒に前へ進めていきましょう。

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