【Finatextホールディングス】金融基幹システムのSaaS化で業界のアップデートに挑むテクノロジーカンパニー 

今回は、証券、保険業界向けにSaaS型の基幹システムを提供する「Finatextホールディングス」(以下フィナテキスト)を紹介します。

フィナテキストは、クライアントである金融事業者が顧客視点に立ったわかりやすい金融サービスを開発・提供する上で、既存の基幹システムがボトルネックになっていることに着目。レガシー化した金融の基幹システムをクラウドに転換し、より柔軟な金融サービスを構築できる基盤をSaaSとして提供しています。

海外では非常に急成長している金融のSaaS領域。国内を牽引するフィナテキストの事業と開発体制、開発文化、ポジションや成長機会について解説していきます。

今回インタビューに答えて頂いたのは株式会社Finatextホールディングスの取締役CFOの伊藤さんと株式会社Finatextのエンジニアリングマネージャーの河本さんです。

目次

1.まずは会社とプロダクトについて紹介

会社の歴史とプロダクト、実績や今後の展開などについて紹介していきます。

株式会社Finatextホールディングス

売上:非公開
社員数:187名(グループ全体)
所在地:東京都千代田区九段北3丁目2番11号 住友不動産九段北ビル4F
URL:
https://hd.finatext.com/

2013年設立の金融向けSaaSスタートアップ

フィナテキストは2013年に設立し、2018年のホールディングス化を経て、現在は3つの事業を複数の子会社で展開しています。
設立初期には主に金融機関向けに新規Webサービスを企画・開発するソリューション事業を行っていましたが、2016年にナウキャストを子会社化して経済ビッグデータの解析事業を開始。2018年から証券サービスの基幹システムをクラウド化して提供する金融インフラストラクチャ事業を開始し、2020年に保険サービスでも同事業を展開しています。

累計調達額も90億円を超える、大型の金融SaaSスタートアップです。

  1. 金融事業者向けDX・デジタルマーケティング支援事業(株式会社Finatext)

  2. 経済ビッグデータの解析および利活用支援事業(株式会社ナウキャスト)

  3. 金融インフラストラクチャ事業(株式会社スマートプラス、スマートプラス少額短期保険株式会社)

金融機関の基幹システムのレガシー化問題

フィナテキストは、「金融がもっと暮らしに寄り添う世の中」の実現をビジョンとし、「金融を“サービス”として再発明する」ことをミッションとして掲げています。

この背景について説明していきます。

そもそも国民のほぼ全員がサービスを享受している、最大規模の市場である金融産業。一方で個々の利用者の金融サービスへの満足度は決して高くはないのが実情です。

その背景には、複雑なビジネスモデルや法規制などの問題もありますが、フィナテキストは、様々な事業者と取り組みを進めていく中で「融通の効かない、レガシーな基幹システム」が柔軟でスピーディーなサービス提供を阻む大きな要因であると考えました。

インフラとバックエンドとフロントが密結合しているため、フロントのちょっとした仕様変更にも多大なテスト工数がかかったり、バックエンドに手を加える場合は億単位、年単位でのコストと時間を要する、というのが一般的な状態となっていました。

そこで、まずレガシー化した基幹システムをクラウドに転換し、利用者の立場とニーズに沿った体験を提供するための柔軟な基盤をSaaSとして提供することにフォーカスしたのです。

各種金融機関や非金融事業者がフィナテキストの基盤を使えば、新しく金融サービスを始めることはもちろん、ユーザー行動分析の結果を迅速にサービスに反映することも可能になり、より顧客視点に立った金融サービスの企画・開発を促進できると考えました。

フィナテキストの事業戦略

フィナテキストは、(1)基幹システムのSaaS化、(2)利用者側のサービス体験の改善、(3)それに伴うデータ収集・解析。この3つを組み合わせることで、最終的なエンドユーザーのサービス体験向上を狙っています。

(1)まずは、コアとなっている基幹システムを柔軟かつスピーディーにサービス提供が行える仕組みとして事業者向けに提供します。

(2)そうすると、事業者は自社の顧客向けに新しい金融サービスを提供できるようになります。例えばWebやネイティブアプリなどを介した預貯金の管理や株の受発注、保険の手続きなどがそれにあたります。バックエンドとの連携が容易に可能なので、事業者はより使いやすいUI/UXや、ユーザーにとってWOWのある企画にフォーカスできるようになります。

(3)結果的に、使いやすいサービスが提供されることでこれまで窓口や電話で手続きをしていたユーザーがWebやネイティブアプリに移り、その行動データがどんどん蓄積されていきます。また、基幹システムがSaaS化されているので、金融機関とのデータとの連動も容易に実現します。

この「基幹システムのSaaS化」、「利用者にとって使いやすいサービス体験(含むUI/UX)」、「データの収集・解析」の3つをコアな価値として事業を展開しています。

↓各社の関係性を図示化↓

自社サービス運営による実験と学習

フィナテキストのユニークな点は、グループ会社が金融商品取引のライセンスを保有し、自社でも金融サービスを提供してサービス・事業の学習サイクルを早めている点にあります。

例えば、コミュニティ機能をもちあわせた手数料無料のスマホ投資サービス「STREAM(ストリーム)」を2018年に提供開始しています。これらのサービスは単体での事業的収益のみならず、サービス運営を通じて、法規制への対応、柔軟なシステム設計開発、ユーザーフレンドリーなUX/UIなど、優れた顧客体験を備えた金融サービスを生み出していくための知見をフィナテキストに提供しています。

つまり以下の図にあるように、バックエンドのSaaSを提供しながら、顧客と接点を持てる自社サービスを運営することで、SaaSの学習・改善のスピードを高めています。

↓SaaS事業と自社事業の関係性↓

クレディセゾンなど大手企業との協業・提携の実績

2019年には、日本最大級のクレジットカード会社であるクレディセゾンと協業し、セゾンカード・UCカード会員向けの投資運用サービスである「セゾンポケット」を提供開始しています。

これはバックエンドの基幹システムにフィナテキストのSaaSを活用し、アプリ側の企画・開発も含めて担当した協業案件となります。

スタートアップでありながら、国内大手の金融サービスと連携できるだけのビジネス的な強みも有しています。他にも国内大手の大和証券やあいおいニッセイ同和損保などから出資をうけるなど大手事業会社とパートナーシップを実現しています。

自社サービスだけでなく、国内有数の顧客規模を有する金融サービスに関われる機会は非常にレアなことであり、働く側にとっての魅力とも言えます。

政府や海外トップのヘッジファンドも利用するビッグデータ解析事業

ビッグデータ解析事業を担う子会社、ナウキャストについても説明します。

ナウキャストは、オルタナティブデータを解析し、機関投資家の意思決定を支援するサービスやリアルタイムかつ正確なマクロ指数を提供しています。

オルタナティブデータとは、POSデータやクレジットカードの決済データ、ポイントカードのデータなど、金融領域においてこれまで利活用の進んでこなかったデータの総称です。データを保有するパートナーからこれらのデータを預かり、マスターデータの整備、クレンジング、レポーティング、分析ツールの提供など、一気通貫したサービスをクライアントに提供しています。

例えば政府機関であれば、ナウキャストが提供するマクロ指標をもとに、地域別の経済動向をより早く認識することができ、それに応じた対応もスピーディーに展開できます。
またヘッジファンドであれば、特定銘柄の業績状況を一次データを元にして分析・予測することができるため、投資判断に活用することが可能となっています。

今後、ここで蓄積したデータ解析技術や人材を金融インフラストラクチャ事業のデータ分析でも活用することによって、金融サービスにおける顧客体験を洗練させていくとのことです。

海外で注目される金融SaaS領域

金融SaaS領域は、海外でも非常に注目されています。例えば、海外の調査機関CB Insightのレポートでは、Banking Product(デジタル銀行関連サービス)を提供するスタートアップがここ数年で一気に増えていることがわかります。

↓Banking Product(デジタル銀行関連サービス)を提供する企業↓

また、同レポートでは、米国企業のEarning Call(投資家向け説明)の中でBaaS(Banking as a Service)に関して言及される回数が急増していることも指摘されています。

このように、海外では様々な金融サービスが提供されており、その裏側を支える金融SaaSへの需要を読み取ることができます。

↓BaaS(banking as a service)の言及数↓

UberとBaaSの関係

一つ事例を紹介します。

米国のUberでは、ドライバーに対してオンライン決済やローンなどの金融サービスを提供しています。これらの金融サービスはUberがゼロから独自で構築しているわけではなく、SaaS事業者の力を借りて実現しています。

このように金融機関のみならず、ユーザーと接点をもつ事業者向けにも拡がりをもつことができるのがこの事業領域の魅力と言えます。

参考

Uberの金融サービスを裏側で担うカリフォルニアの地銀

証券・保険以外の金融領域への参入も検討

当面は証券・保険領域におけるパートナー(導入事業者)を増やすことに注力していき、それぞれで立ち上げた新サービスのグロースにフォーカスしていきます。その上で、証券・保険以外のレンディング(貸付)や送金決済などの領域への拡張も検討していきます。

金融サービスとしての幅を押さえることで、あらゆる情報が蓄積していきます。セキュリティや情報保護は大前提とした上で、フィナテキストの各事業が扱う様々なデータを収集し、解析することで、顧客体験の最適化を強化することができます。

テクノロジーを活用した金融システムのサービス化によって実現できる未来は、決して簡単なものではないですが、非常にチャレジングで壮大なテーマであることが魅力的です。

2.次はプロダクトをつくっている開発チームを紹介

開発体制、開発文化や今後のチャレンジなどについて紹介していきます。

開発チームの体制や技術スタック

エンジニアは全体で30名ほど在籍し、20代後半~30代前半のメンバーを中心としたフルスタックなエンジニアが多くなっています。

大小合わせて60超のプロジェクトをまわすため、証券SaaS、個人向け証券サービス、フィンテックソリューション、全社共通プラットフォームなど7つのチームが編成され、それぞれが複数のプロジェクトを担当しています。ほとんどのエンジニアがチーム内で2つ以上のプロジェクトにアサインされており、エンジニアによっては2つ以上のチームに属している者もいます。

コミュニケーションコストを最小限にするため、各プロジェクトにアサインされるエンジニアは1~4名とスピード感重視のメンバー構成になっている点が特徴的です。

基本的にはフルスタックに活躍できる環境のため、サーバー、インフラ、フロントエンドなど様々な領域を横断して活躍したい人には魅力的です。

技術スタック

金融インフラストラクチャ事業のサービス開発ではGoを基本とし、一部過去のプロダクトではRailsを利用しています。

また直近では新規のプロジェクトでサーバーサイドKotlin + DDDという新しい技術・手法にチャレンジするなど、既存の技術スタックに囚われない取り組みも積極的に取り入れています。

インフラはTerraformなど、IaCによる省力化に注力し、結果的に専任のSREチームがなくても安定してサービスを運用できる環境を実現できています。金融系サービスですべてAWS ECS上に載せられているのは他では珍しく特徴的です。

ビッグデータ解析事業を展開するナウキャストは、言語はPython、データパイプライン管理にはAirflowを利用しています。

Airflowによるバッチ処理は、日次ベースでデータ数も多くはありませんが、各処理が非常に複雑で、いかに品質担保するかが重要となっています。

↓技術スタックの一部↓

参考
フィナテキストの技術スタック

開発フロー

プロジェクトごとに開発チームで進め方を決定しますが、基本的にはアジャイル開発を採用しています。テックリードを中心として、なるべく小さいメンバー構成で、ビジネスサイドと密にコミュニケーションし、スピード感を持って開発を進められるようにしています。

開発スタイル: プロジェクトごとに開発チームで進め方を決定する

テスト実施: 過去のプロジェクトの失敗経験から、テストには注力

CI/CD環境: AWS CodeBuild、AWS CodePipeline、GitHub Actionsをユースケース毎に組み合わせて利用

コードレビュー: こちらも同じく、過去のプロジェクトの失敗経験から注力

企画決定フロー: ビジネスサイドとTechLeadが中心となって決定

技術的負債対応: 現行のプロダクトのグロースを優先しており、今後優先度をあげていく

「金融」だけど、フラットで柔軟で小さく始める開発文化

金融領域だとどうしても硬い、古臭いという印象がありますが、フィナテキストはそれとは真逆の組織文化をもったチームです。

いくつかの象徴的な取り組みをピックアップします。

  1. フラットなコミュニケーションを維持するため、意図的に役職を設けない

  2. 役割に固執せず、主体的に問題を拾い解決するメンバーが多い

  3. その事例として、グループのビジョン/ミッションのアップデートプロジェクトにエンジニアが多数関わっている

  4. 部門の概念もなくプロジェクト単位で柔軟にチームを組成

  5. 技術スタックにこだわりもなく合理的に正しければOK

このように、金融という非常に大きく難解なものを取り扱っていますが、その中では非常に柔軟な運営を実現しています。

これらを実現できている一つの要因として採用にもこだわりをもっており会社のプリンシプル(行動規範)の一つである『じぶんごと』という価値観に共感できる人をとっていることで、自走的に問題解決ができるチームが生まれています。

学習に投資するチーム

またもう一つの特徴は、学習に対しても積極的に投資している点です。

グローバルな情報収集、グローバル人材のチーム組成などの観点から英語スキルの習得を重視しています。

実務としての緊急性が高くなる前から専任のネイティブスピーカーの講師に1on1の指導を受けられる環境を用意し、英語でのLT練習では、英文法だけでなく技術的観点からも適切なフィードバックを受けることができます。実際にナウキャストでは海外のメンバーも多く、通常業務のコミュニケーションは英語でおこなわれています。

また毎週木曜に開催される社内勉強会(フィナアカデミー)では、金融に係るビジネス的なトピックなどについてもインプットができる勉強会となっており、エンジニアにも好評です。

他にも毎月1万円まで、承認なしで会社の経費でのセミナー参加、技術書・専門書の購入が自由に可能など、学習を通じた成長へ積極的に投資しています。

↓英語レッスンの様子↓

↓勉強会(フィナアカデミー)のオンライン開催の様子↓

金融以外のバックグラウンドをもつエンジニアが多数在籍

金融をバックグラウンドとするエンジニアもいますが、メルカリ、DeNAなどのtoCサービスやゲーム会社などで事業の急成長を経験したエンジニアも多く、非常に優秀でバラエティ豊かなメンバーで構成されています。

またオープンソースプロジェクトのコントリビューターや直近のISUCON10本選で有志チームが総合4位になるなど、技術的な尖りを持つメンバーが在籍しています。

このような高度な人材がいる強みをさらに活かすため、事業や所属会社を越えた人材の交流・異動などにも取り組み、刺激・成長がうまれるような取り組みも検討しています。

参考
ISUCON10の予選を4位で通過しました
ISUCON10の本選で4位になりました


3.最後に、今もとめるポジションと成長機会を紹介

記載時点(20年10月)で募集中のポジションと期待値やそこで得られる機会について紹介します。

いま求めているポジション

現在特に募集しているポジションは、テックリードを任せられるエンジニア。具体的には、新規プロダクト開発、または既存プロダクトのリファクタリングのリード役を期待されています。テックリードとしての開発経験やマネジメント経験、また新規プロジェクト立ち上げから安定稼働までの経験などがある方がマッチします。

またビッグデータ解析事業のナウキャストでは、データエンジニア (ML領域、DWH領域、ソリューション領域)を募集しています。ビッグデータの分析・レポート(ML領域)、PoCなど、クライアントに対するソリューションの提案や開発 (ソリューション領域)、共通データ基盤やライブラリの開発 (DWH領域)などが期待されています。

データ分析スキルだけではなく、一般的なエンジニアに近いスキルセットがある方の方がマッチ度は高そうです。

社会的インパクトの大きな金融サービスに関われる

フィナテキストに関わることで得られる経験について説明します。

1. 社会的インパクトの大きな金融サービスに関われる
証券向けSaaS, 保険向けSaaSを活用したプロダクトを筆頭に、新規プロダクト開発を今後も積極的に行っていきます。そこで、クレディセゾンとの協業プロダクト「セゾンポケット」のような、大手企業との協業によるプロダクト開発をゼロイチでリードしていく (かつそういった経験を複数つむこともありうる) というのはキャリアとしても大きなチャレンジとなります。

2. サービスの大規模リニューアル
登録ユーザー100万人を超える既存サービスの中には技術的負債などリファクタリングが必要なものも多く存在しているのが事実です。そこで、技術選定の裁量を持った上でドラスティックにコードベースを刷新し、プロダクトをさらに成長させていくための環境づくりは、エンジニアとしても成長機会の一つとして挑戦しがいのあるテーマです。

3. 非常に大量で価値の高いデータを使った事業・プロダクトの開発
今後、全社的なプラットフォームやプロダクトを通して非常に大量のデータが集まり、高付加価値を生むことが期待されます。
データエンジニアリングノウハウをシステム化して再利用性を高めることで、他のプロダクトにおいてもデータからインサイトを得られるようにするポジションは他ではなかなか経験できないはずです。


インタビュアー:株式会社トラックレコード CTO 上原 将之
京都大学経済学部卒業後、2010年にDeNAに入社。エブリスタ、MYCODE、歩いてオトク、AI創薬プロジェクトなど、様々な新規サービスの立ち上げや開発・運用に携わる。 サーバー、クライアント、iOS・Android、機械学習等、幅広い技術スタックでの開発を経験する。 その後フリーランスエンジニアを経て、株式会社トラックレコードを創業。

■挑戦する企業の採用活動を支援する「TECH HIRE」について

魅力的なミッション、イシュー、ケイパビリティを有しているのに、採用や広報活動が十分でなく、埋もれている優良企業が世の中には多数存在します。またエンジニアの力によってさらなる成長が期待できるのに、開発力を担保しきれずに、思うような成長を実現できていない企業も多く存在します。このような課題感をもつチームに対し、エンジニア採用領域に特化してサービス提供をしてきた実績、ノウハウ、ナレッジをもとに組織設計・母集団形成の戦略策定から実行をパートナーとして推進します。

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